●バンド
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採集狩猟社会において広くみられる,数家族から数十家族からなる非定住的小集団。ホルドと呼ばれることもある。多くの採集狩猟社会では,バンドは基本的な社会単位で,自律の政治的・経済的な共同体である。複数のバンドを統合するような社会組織はみられない。このような社会をバンド社会,またはバンド=レベルの社会と呼び,より複雑な組織・制度をもつ部族社会や首長制社会を区別する。バンド社会はすべて採集狩猟経済であるが,採集狩猟社会のすべてがバンド=レベルにあるわけではない。かつて北米太平洋岸に住んでいたアメリカ=インディアン諸族は,豊かな自然環境に恵まれ,採集狩猟経済ではあったが定住生活を送り,さまざまな富を蓄積し,首長制レベルの社会を形成していた。【平等主義】バンド社会は現在世界各地に散在し,人々のおかれている生存環境ははなはだしく異なっているが,彼らの生態・社会には強い類似性がみられ,かなりの一般性をもつバンド社会の輪郭が浮かんでくる。バンド社会を特徴づける第1は“平等主義”で,それは以下にあげるさまざまな局面において働く。[1]身分の平等 バンド内の各メンバーは性・年齢の自然的要因によって区別されるだけで,富や権力における差異はなく,全体を統率するリーダーもいない。バンド全体に関わる意志決定はメンバー全員の合意による。このとき,女性もかなりの発言権をもつところが多く,男女間の身分格差は部族社会・首長制社会に比べはるかに小さい。[2]経済的平等 バンドは多くの場合,一定のテリトリーをもち,その内部を遊動するが,その自然資源に対して各メンバーは平等の利用権をもつ。富の蓄積はみられず,貧富の差は存在しない。[3]食物の分配・物の貸借 個人が獲得した食物や家財・衣類などは個人の所有物となるが,前者は頻繁にほかのメンバーに分与され,後者は貸し借りされる。とくに獣肉などの価値の高いものは,もてる者からもたざる者への寛大な分与が半ば義務化している。バンド内では皆が満腹するか,または空腹のいずれであってもよいが,一部の者が満たされ一部の者が飢えるという状態は道徳的に認められがたい。こういった食物分与の習慣はバンドの生計の安定に役立つばかりではなく,メンバー相互の連帯感を高め,バンドを統合する要となっている。これらの平等主義に反する態度や行為(他人に対する高慢な命令的態度,けちなど)はつよく嫌われ,抗議・無視・嘲笑などによって咎められるが,はなはだしい場合にはバンドから追放される。大きな獲物を仕留めたハンターはバンドの全員に大きな喜びをもたらす。しかし彼は尊敬されることはあっても特別な地位を得ることはない。またその尊敬も一時的なことが多い。
【社会的・空間的柔軟性】バンドの2番目の特徴はその動的性格・柔軟性である。パンドの各家族は一般に血縁・婚姻などによって結ばれている。その構成様式は婚姻ルールなどによって大きく左右され,父系集団的なものから双系的あるいは特定の傾向をもたないものまでさまざまである。しかしいずれの場合にもそのメンバーシップはけっして固定されたものではない。バンドからバンドへの個人や家族の移住は一般にごく簡単に行われ,バンドの顔ぶれは頻繁に変わる。また季節の推移に伴ってバンドがいくつかに分裂したりまた合体したりする。このようなバンドの分裂・合体は自然資源の効率的利用と深い関連をもつが,社会的・精神的な問題とも関連がある。すなわち,集中して濃密な社会生活を送る時機と分散して家族的な自由を楽しむ時機を交互にもつことにより生活のリズムをつくり出すのである。バンド内の不和の解消やバンド間の情報の流通もバンドのこの流動性によって自動的に処理される。バンド社会はこのような強い平等意識と流動性によって特徴づけられている。この特徴が最もシンプルで適応的な社会をつくる一方,権力的組織の発生を妨げ,農耕・牧畜民の部族社会・首長制社会に拮抗する社会を成しえなかったのである。