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●藩鎮 はんちん

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 中国の唐の中ごろから宋の初頭まで存在した地方軍事機関。方鎮ともいった。総指揮官は節度使と呼ばれる。唐の府兵制では,辺境防衛は農民から徴発された府兵が3年間交替で勤務する防人によって支えられていた。しかし7世紀になると周辺諸国・諸民族の隆盛によって唐の周辺が圧迫され,防人を基本とする辺防体制は崩壊することとなり,これに代わって辺境に設置されたのが辺境10藩鎮であった。安史の乱(755〜763,天宝14〜広徳1)がおこると,藩鎮は辺境だけでなく内地にも設置されるようになった。こうして藩鎮は唐代で40〜50,五代では30〜40置かれた。藩鎮の管轄領域は道(どう)といい,1道では少なくて数州,多い場合は10から数十州を有した。節度使は領内の最も重要な州にいて,その州の長官(刺史)をも兼任した。節度使の治所を幕府といい,幕府の置かれている重要州を会府(使府)といい,その他の州を支部といった。節度使は藩鎮兵の統帥者として軍事のみならず民政・財政の権力をも掌握していたので,数万ないし数十万の兵士をかかえる強大な藩鎮は,唐朝の命に服さず領域を世襲して独立的傾向すら示した。その代表が現在の河北省に存在した魏博・咸徳・廬龍の3藩鎮であり,これらは河北(河朔)三鎮と呼ばれた。藩鎮兵力は一般に牙中軍牙軍)と牙外軍とからなっていた。牙外軍支郡に駐屯し,節度使の腹心ともいうべき鎮将に率いられていたのに対し,牙中軍は会府に存在して節度使の直接指揮下に置かれていた。しかも牙中軍はえらびぬかれた優秀な兵士が集められており,いわば節度使の親衛軍であるとともに藩鎮兵力の中核部隊でもあった。したがって牙中軍兵士は牙外軍兵士よりも待遇がよかった。牙中軍が父から子へと世襲されて団結を強めていくと,やがて彼らは意にそわない節度使を追放したり殺害すらした。節度使の座がこのように不安定であれば,節度使はその一族を要職に配置するとともに,牙中・牙外軍以外のいわば私的兵力(家兵)を自己の周囲に置いた。この家兵の究極の形が仮子である。仮子とは血縁的なつながりのない家兵を実子に擬制して主人(仮父)・と従者(仮子)との主従関係をより強固にする目的で設けられた一種の養子である。このような仮父子関係を結んだものには独立的傾向の強い節度使が圧倒的に多かった。ところで藩鎮の財政的基盤は両税法によっており,徴税鋳物を藩鎮・州・県という各級統治区画で必要分を残し(これを藩鎮の場合には留使,会府では留州,県では留県という),残りを上級の統治機関に送付する方法となっていた。県から会府・支郡へ送付することを送使と呼び,さらに会府・支郡から藩鎮へ送付することも送使といった。最後に藩鎮から中央に送付するのが上供である。したがって藩鎮は中央の財源となる上供を加減しうる位置にあり,唐王朝との力関係によって左右された。そこで唐は藩鎮権力を抑制するため憲宗の809年(元和4)と819年(元和14)に改革を実施した。第1回の改革は,会席の上供をやめこれを留使にあて,その代わりに支郡送使を上供にふりむけ,会府の費用が不足する場合のみ支郡からの送使を認めた。大藩鎮ほど多くの支郡をかかえていただけに経済的打撃は大きく,逆にその分だけ中央への上供額は増加した。しかも支郡は上供によって中央と直接結びつきを強め,節度使の支配から乖離し始めた。こうして藩鎮の多くが唐の支配下に強く規制されるようになると,第2回の改革では牙外軍を駐屯地の長官(刺史・防禦使団練使)の統率下において節度使の支配から切り離した。中央は州の長官を介して支郡の徴税と軍事力を掌握し集権化をさらにすすめた。「河北三鎮」を除いて,藩鎮は節度使の権力基盤の縮小という形をとって唐の権力機構に包摂された。しかし唐の財政不足が進行すると,節度使は中央にくみして上供の増加のために領内の収奪を強め,さらには藩鎮兵士の給与削減の手段さえとった。それは兵士の反乱を誘発し,収奪によって没落・破産した農民層などとしだいに連合しながら唐朝支配を分断して自立志向を強めることとなった。黄巣の乱(875〜884,乾符2〜中和4)はこれらの藩鎮の自立を決定的なものとした。反乱のなかで藩鎮兵土・地主・群盗・無頼亡命の徒・遊民などが藩鎮機構を占拠し,武力によって彼らのなかから節度使が出現して実権を握る,いわば武人体制を実現させた。こうして唐は滅亡し,五代の分裂時代となった。五代の諸王朝はいずれも武人節度使によって建国されたが,後唐・後晋ごろから進出してくる文臣官僚の政治的発言力の強化に伴って武人体制としての藩鎮はしだいにくずれていくこととなり,宋の977年には解体された。

〔参考文献〕栗原益男「安史の乱と藩鎮体制の展開」『岩波講座世界歴史』6,1971,岩波書店

日野開三郎『東洋史学論集』1,1980,三一書房

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