●半檀家 はんだんか
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わが国の寺檀関係においては,通例は一家が一つの寺の檀家になる方式がとられる。しかし地域によっては,同じ一家の成員が異なる寺に所属する習慣をもつところがあり,この方式を半檀家という。この場合,一般的な形態は男女によって所属する寺が異なるというもので,ときには宗派さえ異なることがある。この半檀家制度は,現在の慣行となっている地域があると同時に,現在は一家一寺制になっている地において,江戸時代の宗門人別帳の記載によれば,その時代には半檀家が行われていたことが知れる地域もある。【分布とその様態】半檀家が現在行われている地域は,千葉県を中心とする関東地方一円,山形県・佐渡を含む新潟県・長野県などおもに東日本の一部の村落である。しかし宗門人別帳の分析により江戸時代にこの習俗があったとみられるのはこれらの地域にとどまらず,石川県・岐阜県・滋賀県さらには熊本県・長崎県にも及び,半檀家がけっして一部地域に偏在するものではないことが理解できる。もっとも以上のような現行される地域において,村落のほぼ全戸が半檀家をとるところはきわめてまれで,一部の家のみで行われるケースが多い。また,この制度と寺の宗旨との関係はみられず,あらゆる宗派に分かれている。ここで最上孝敬の整理にもとづき,寺の帰属様式についてみておこう。すなわち,各地の事例をみていくと,その様式には,[1]男女別半檀家 一家で男女が別の寺に属する。この場合一軒の家に男寺と女寺が固定するケースと,嫁は結婚後も生家の寺に属するケースに類別できる。[2]主婦別半檀家 子女はすべて男女にかかわらず生家本来の寺に属し,嫁のみがその生家の寺に属する。[3]その他 主婦以外の家族の一員を別檀とする。以上に整理しうる。
【半檀家の事例】ここで一つだけ事例をあげておこう。千葉県長生郡一宮町の旧一松村では,多数の家は一家一寺制をとっているが,約100戸は男女別半檀家であり,男は本興寺(日蓮宗),女はその末寺に属する。これは他家から嫁いだ嫁や婿養子の場合にも該当する。村内には本興寺の末寺が11寺あるので,いわば男寺1寺に対して女寺11寺となり,女の帰属寺にひろがりがあることになる。当地では,本寺の檀家とされている男の場合でも,葬式をはじめ各種寺の行事の多くは末寺の義務とされ,葬式の際の“引導渡し”と“諷誦読み”のみが本寺の仕事とされている。
【成立事情】半檀家がいかなる社会過程のなかで成立した習俗であるかは現在のところまだ明確な考え方は出ていない。資料的にも,近年ようやく質的に優れた報告が提出されはじめた状態であるといって過言ではない。しかし,ここで従来の幾つかの考え方に依拠して考えてみると,大きく二つの問題が関連してくる。一つは,寺の例の事情が関係するとみられる点である。つまり,先に述べた事例でもその一端がうかがわれるが,寺の勢力を拡大したり,経営をひろげようとする過程から,本寺が檀家を末寺に分散させるということである。また一つは,檀家制度を受け入れた人々の社会構造との関連が推測される点である。すなわち,祖先祭祀などを基盤に,どの社会においても家族や親族の範囲が問題とされるのはつねであるが,わが国の場合,親族組織は父系を重んじる傾向がある。そのことから,とくに男女別ないし主婦別半檀家は,父と息子を軸とする男系筋の結合を優越させ,嫁は家族的祭祀集団に組み入れながらも嫁筋の女たちを女寺に帰属させる,そうした社会観の現れとも考えることができるのである。いずれにせよ,半檀家は単に一家一寺制の例外的制度というのではなく,今後,家族・親族を中心とする社会構造との関連のなかで,調査分析をしていく必要があろう。
〔参考文献〕最上孝敬「半檀家制について」日本民俗学会報50,1967
村武精一『家族の社会人類学』1973,弘文堂
社会伝承研究会編『祖先祭祀の展開と社会構造――社会伝承研究V』同研究会,1976