●半族 はんぞく
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一つの社会が大きく二つの集団に分かれ,社会の全成員がそのどちらかに所属しているような場合,それぞれの集団は半族と呼ばれる。半族は,その帰属の仕方によって父系半族と母系半族に区分される。父系半族というのは,半族への帰属が父をたどってなされるもので,父とその子どもたちは同じ半族に属することになる。一方母系半族では,それとは逆に,子どもたちは母と同じ半族に属する。通常半族には,多くの単系出自集団が含まれており,父系半族の場合は父系出自集団が,母系半族の場合は母系出自集団がその構成要素となっている。出自集団というのは,祖先を共通にする人々のまとまりであるが,同じ半族に属する各出自集団の祖先たちは,ある場合には,神話の上で兄弟であったり,またある場合には,同じ創造神によってその出現を発見されたり,といったような,何らかの関係をもち,もう一方の半族に属する出自集団と自らを区別している。同一半族に属する人々は,たとえ出自集団が異なっていても,お互いに同じ集団に属しているという意識をもっており,とくに,半族が名前をもっている場合にはそれが著しい。メラネシアのヴァヌアツ北部の島々には,母系半族を伴った社会がいくつかみられる。そのうちの一つ,ラガ島の人々は,タビ・ブレと名付けられた二つの母系半族に分かれているが,たとえばタビに属している人々は,たとえ島が異なったとしても,そちらの社会に存在する二つの母系半族のうち,どちらがタビにあたるのかということを知っており,その半族に属する人々は,タビの人々と同胞であるという意識をちゃんともっているのである。【外婚半族】同一半族に属する人々同士の結婚を禁止する場合,その半族は外婚半族と呼ばれる。われわれの社会で,男がその姉妹と結婚生活を送るなど考えられないことであるが,外婚半族をもった社会では,同じ半族の者同士が結婚するということは,母や姉妹と結婚するのと同じくらい信じられないことなのである。そして,同一半族に属する人々はお互いに親族であるという意識を強くもっており,場合によっては,血縁関係がないにもかかわらず,同一半族の人々はすべて親族をさす名称で呼ばれることがある。さきほどのラガ島では,母はラタヒ,母方のオジはタラベ,兄弟はトゥア,姉妹はホゴシ,姉妹の子どもはアロアと呼ばれているが,自分と同じ母系半族に属する人々で,自分より一世代上の女性はすべてラタヒ,男性はタラベと呼ばれ,同世代の男性はすべてトゥア,女性はすべてホゴシと呼ばれ,一世代下の者は男女を問わずすべてアロアと呼ばれているのである。ところで,同一半族内での結婚を禁止するということは,必然的に配偶者をもう一つ別の半族に求めることになる。今仮に,二つの外婚半族をA,Bとすると,Aの男性はBの女性と,Bの男性はAの女性と結婚することが必要となってくる。ということは,Aの男性は結婚にさいして,自分の半族の女性をBの男性に妻として与え,Bの男性は,自分の半族の女性をAの男性に妻として与えると考えることができる。この視点からみると,Aの男性とBの男性は,結婚にさいしてお互いの半族の女性を交換していることになる。こうした半族間の交換婚は,外婚半族の必然的帰結として生じるのである。そして,女性の交換は世代を越えて二つの半族間で継続してゆく。父系半族を例にとろう。ある男性がAに属しているとすれば,その妻はBに属していなければならない。そして父系であるから,その娘はAに属することになる。彼女は,したがって,結婚するときはBの男性とでなければならない。ということはこの時点で,母はBからAに与えられたという形式をとって結婚しているのに対し,娘は逆に,AからBに与えられるという形式をとって結婚する。さらに,この娘の娘は,その母とは逆のBに属するため,結婚にさいしては,BからAに与えられるという形式をとる。このように,外婚半族組織は,あらゆる意味で,交換婚の好例を提供するのである。
〔参考文献〕R.フォックス,川中健二訳『親族と婚姻』1977,思索社
W.H.R.リヴァーズ,小川正恭訳『親族と社会組織』1978,弘文堂