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●発掘 はっくつ

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 土中にあるものを掘り出すことだが,考古学的には明確な目的意識をもち,一定のシステムにのっとって,遺跡から遺構・遺物などを掘り出すことをいう。

【発掘の進行】考古学の最も基本的な作業である発掘では,埋没している遺構・遺物を過去のある時点の状態に,いちばん近い形で再現することが望ましく,あわせて埋没状態から可能な限り情報を抽出する必要がある。しかし遺跡には,単一集団がごく短期間に残したものもあるが,多くの場合は長期にわたるものや,再三の利用の結果を留めている。したがって発掘に当たっては,層位学にもとづく掘り下げが必要で,また遺構・遺物の出土のしかたに対する細心の注意が要請される。究極的には,遺構・遺物の共存関係と先後関係とを明らかにしなければならない。共存関係は,同一層準をたどることによって得られるはずだが,使用当時の原位置をとどめる遺構・遺物の観察を重ねて検証を深める必要がある。もとよりこの作業は,整理作業が進むなかでも再三行わねばならないから,研究室で発掘現場が完全に再現できるような,精細な記録を残さねばならない。しかし実際には,調査者の現場における「判断」が基礎となるから,発掘の担当者は豊富な経験と冷徹な判断力の持ち主であることが望まれる。

【学術発掘と行政発掘】近年,問題解決の目的で行う発掘のほかに,行政発掘,事前調査,緊急調査などの名で呼ばれる発掘が急増し,学術発掘は一隅に追いやられたかの感がある。開発などの土木工事によって消滅する遺跡の記録保存などを目的とした調査である。学術調査が問題解決に必要な最少限の発掘にとどまるのに,この種の発掘は規模が大きく,新発見も多いが失われるものも大きくなる危険性を伴う。詳細な記録が残されたとしても,問題意識を欠くままでつくられたものは,役立たない記録である場合も生じうる。調査者はつねに研さんを積み,研ぎすまされた問題意識をもって事にあたらねばならない。

【資料の多様化】発掘は,学術調査といえども遺跡に対する破壊行為としての側面をもつ。そのため調査は最少限にとどめることが望まれるとともに,正確かつ最大限の情報の獲得をめざさねばならない。近年自然科学者らの参加を得て,採取される資料も人為物に限定されなくなった。たとえば遺跡の土から植物花粉を抽出し,当時の環境復原を試みたり,田畑の土壌のプラント=オパール分析により栽培された穀物の同定を行うなど,一塊の土たりとも,それが正しく採集されたなら,われわれに限りない情報を提供すると思わねばならない。それゆえ,発掘には多領域の専門家の参加が要請されるのである。担当者は万全の調査体制を整える責任がある。

【文化財保護法と発掘】発掘は,人類の遺産である文化財とりわけ埋蔵文化財の破壊にかかわる行為であるから,文化財保護法の適用を受ける。すなわち,発掘を行う場合は,学術調査なら30日前,開発行為に伴う場合は60日前までに,文化庁長官あて所定の届出をすべく義務づけられている。また発掘終了後は,所轄警察署に埋蔵物発見届を,また文化庁長官あての報告書ならびに埋蔵文化財保管書を提出することになっている。埋蔵文化財は,人類のそして民族の遺産であり,私すべきものでないとの精神がこめられていることは,いうまでもない。

〔参考文献〕大井晴男『野外考古学』1966,東大出版会

文化財保護委員会『埋蔵文化財発掘調査の手引』1966,国土地理協会

馬渕久夫・富永健『考古学のための化学10章』1981,東大出版会