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●羽衣伝説 はごろもでんせつ

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 天界から飛び来った天女が,羽衣を失ってしばらく人間世界に留まり,のち再び羽衣を得て天界に離れ去るという伝説。世界的に分布する白鳥処女説話の一型である。彼我両界の存在は一時邂逅しても必ず乖離(かいり)する,という説話構造に従って語られる。昔話では「天人女房」に分類され,異類婚姻譚の一つとされるが,特定の場所や事物と結合して伝説となった場合が多い。謡曲の『羽衣』がよく知られるが,最古の文献は『風土記』の伝承で,その一つ『逸文近江国風土記』には次のように記される。近江国伊香(いかご)郡奈呉(よご)郷の伊香の水江に天の八女(やおとめ)が天降し水浴をした。伊香刀美(いかとみ)なる男が犬を使い末妹の羽衣を盗ませた。彼女は天に帰る方途を失い,伊賀刀美と夫婦となり,男女各2人の子を生んだが,のちに羽衣を探し出し,天に帰った。彼らの子孫は伊香連(いかごのむらじ)の先祖となった。このように羽衣伝説が家門の系譜に組み込まれた事例は後世関東の千葉氏,出雲の尼子氏の家伝にも見られる。また『風土記』の他の一伝は,『逸文丹後国風土記』に「奈具(なぐ)社」の縁起譚として語られるもので,この話では天女は天に帰らず,この社に祀られたとされている。

〔参考文献〕柳田国男『昔話と文学』1938,創元社

関敬吾『昔話の歴史』1966,至文堂