●バクティ信仰 バクティしんこう
アジア インド AD
「帰依」,「献身的信仰」を意味する。自分を無にしてひたすら神を思念することによって,究極的には神と自己とが一体化し,救済が得られるという帰依信仰。6〜8世紀の間に南インドでナーヤナール,アールヴァールと呼ばれる信者集団によって唱導された。その後,11世紀にはタミルのバラモン哲学者ラーマーヌジャによって信仰の理論体系がつくられた。15世紀に入ると南インド出身のラーマナンダによる布教を契機として,これまで南インドを中心にしたバクティ信仰は,北インドでも大きな影響力を及ぼした。とくにイスラーム教のスーフィーイズムと相互に刺激を与えることにより,バクティは大衆のあいだに浸透した。15,16世紀にはベンガル出身のバラモン,チャイタニヤや,カービル,ナーナクなどの聖者によってこの民間信仰は頂点に達した。バクティ信仰の特徴は神秘主義的であり,また難解な教理や形式的儀礼を否定し,神のもとでの絶対的平等を説いた。そのため信者の大多数は下層カーストを中心とする民衆であり,また聖者と呼ばれる者も少数のバラモンを除いて零細農民や職人の出身であった。女性の参加やアウト=カーストの寺院参内を認め,布教は各地の俗語で行った。