●麦秋 ばくしゅう
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麦の実り熟する初夏のころ。一般に農作物の収穫は秋に行われるが,大麦・小麦は前年に播種し,田畑で越冬して生育し,5月下旬から6月にかけて表刈をする。初夏のころは農地も山野もまだ新緑の時節であり,そのなかに黄熟した麦穂のたなびく美しい田園風景となる。麦秋は日本経済の高度成長が開始する昭和30年代以前には日本農村の原風景の一つであった。俳句では初夏を表す季語の一つである。〈病人の駕も過けり麦の秋(蕪村)〉日本の麦は畑作物のなかでは最も重要な作物であり,おもに農民の自給食糧として広く栽培され,日本の農業技術を代表するほか,作物との組み合わせによる田畑二毛作が行われたのである。明治初年から昭和20年代の麦作付面積は130〜180万町歩である。しかし,敗戦後には国際小麦協定への加入や麦価の相対的低位性による農家の麦作放棄が進み,現在の麦自給率はわずか数パーセントにすぎない。外国産麦の大量輸入が麦秋の季節感を喪失させたのである。