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●年齢階梯制 ねんれいかいていせい

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 社会の成員を性と年齢によって区分し年長順に序列づける制度で,ほとんどが女子を排除し,男子だけで組織される。未婚の青年・既婚の中年,および長老の各世代(年齢集団)がそれぞれ軍事・政治・祭儀といった社会的役割を階梯的に分担するシステムで,各階梯への移行は,一定時期の通過儀礼によって集団的になされるが,とくに未成熟の少年から青年階梯への移行が割礼などの成年式として顕著である。若者入りした青年はかなり長期間,戦士たる任務を果たしてからでないと結婚できない。結婚して中年階梯になると政治にかかわるようになるが,社会の究極的権威は宗教・祭祀儀礼をつかさどる長老階梯にあるから,年齢階梯制はしばしば一種の長老制になることが多い。女子では初潮がまちまちなので成女式も個人的になされ,また妊娠・出産・育児のため家族や親族の紐帯をたちきれぬから,社会的性向が弱く,娘組など男子の若者組に類似のものがあっても年齢階梯制にいたらない。

【日本の若者組と宮座】これに対しわが国の若者組は下に子供組,上に中年組や長老組が顕在的ないし潜在的にあることが少なくなく,一般に年齢階梯制とみなすことができる。機能的に青年階梯が主体となる“若者組”と長老階梯が中心の“宮座”に大別でき,前者は漁撈のような労働組織にかかわるので漁村などで顕著であり,後者は村落社会の神社祭祀を司る宗教組織としてもっぱら機能している−−宮座では専職の宮司はなく,神に最も近い者として最長老が年番の神主となり引退する(祭祀長老制)。いずれも西日本に分布する傾向がつよく,東日本に顕著な本分家関係による同族的タテ社会とは異なる構造的基盤に適合した社会類型と考えられている。

【他民族の年齢階梯制】年齢階梯制は未開・文明を通じて普遍的にみられるわけでなく,若干の社会に分布するだけだが,一般に氏族組織などの血縁組織がつよい社会で未発達なのは,そうしたところでは性・年齢といった単純明快なグルーピングの契機が強固な血縁紐帯をたちきれないからだと考えられる。年齢階梯制が最も顕著に分布するのは東アフリカのナイル語族系の牛牧民社会で,ここでは畜群の防衛管理にきわめて有効な社会システムとして年齢階梯制が成立したと思われる。アフリカ部族社会とわが民俗社会では文化格差が大きく直接比較できないが,原理的な類比は可能なので,この視点からすれば上述のように理解できる。東アフリカ以外で年齢階梯制が認められるのは,東北および中部インド,インドネシアやメラネシアの一部,ミクロネシア,さらに南ブラジルの一部などだが,わが国の周辺では台湾のインドネシア系原住民の高砂(高山)族のものや新羅時代の韓民族の“花郎”制などが知られている。中国では先秦時代にあったことが文献から窺われるが,現代中国にはみられない。ヨーロッパでも同様で,ただ古代ギリシアのスパルタにあったことが文献にみられる程度である。

【年齢階梯制の諸問題】血縁や地縁による集団組織に対して年齢階梯制をはじめて措定したのは,ドイツの民族学者 H.シュルツであるが(『年齢階梯制と男子結社』1902),彼は年長序列があまり厳しくない集団である男子結社についても包括的に論じた。その後,H.ウェブスターが男子結社を成年式における秘儀を強調して“秘密結社”とみなし,秘儀を氏族トーテミズムと結びつけて解釈し,これが部族的成年式に発展して年齢階梯制になったとした。さらに W.シュミットは秘儀は成員以外とくに女子供に対するもので,その習得は年長序列と結びつかず,また秘儀性のゆえに部族の領域をこえて組織される点に特色があるとして,男子結社は年齢階梯制とそもそも成立基盤が異なると説いた。このように年齢階梯制と男子結社ないし秘密結社の概念には微妙なズレがあって,実際の解釈では難しい問題がある。

〔参考文献〕江守五夫『日本村落社会の構造』1976,弘文堂

高橋統一『宮座の構造と変化』1978,末来社

岡正雄『異人その他』1979,言叢社