●ネパール王国 ネパールおうこく
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東経80゜4´〜88゜12´,北緯26゜22´〜30゜27´。面積14万2,094平方km,人口1,660万人(1985推定)。グレートヒマラヤに沿った世界有数の山岳内陸国で,北は中国領チベット,東・西・南はインドに接する。南部インド国境に沿った地帯はガンジス平原の北端にあたり,タライ平原と呼ばれる低地で,気候も人文も北インドと共通している。北部はヒマラヤ山脈の主峰が連なり,世界の屋根といわれる。2,000〜3,000mのマハバーラタ山脈,1,000〜1,500mのチューレ(シヴァレク)山脈がグレートヒマラヤに平行して東西に並び,コシ,ナラヤニ,カルナリの三大河の本支流が山脈を南北に切って流れ,深い狭谷をなし,谷底は最近までマラリヤがはびこり人々は急峻な山腹から尾根筋に部落をつくっていた。気候は緯度の上では亜熱帯であるが,高度によって極寒帯までさまざまに変化し,雨期(6〜9月)と乾期(10〜5月)にわかれる。今世紀に入って人口増加による過開発で山地が極限まで拓かれ,森林が消滅し,土地の保水力の低下・表土の流失・地力低下・山崩れなど自然破壊がすすみ,ネパールの将来に大きな影をおとしている。【ネパールの歴史】ネパールの歴史はネパール盆地(カトマンズ盆地)の歴史でもある。盆地以外はトライバルな文化段階のさまざまな民族がたがいに孤立して分布していた。盆地には紀元前から人が住みついていた。西紀1〜2世紀にはリッチャビ王朝王朝が興り7世紀ごろまでつづいたといわれる。仏教が一般的であったらしい。13〜18世紀にはマッラ王朝王朝が盆地を支配し,この時代をネパールの中世とする。農業・手工芸・土木建築などの技術が発達し,チベット―インドを結ぶ長距離中継貿易が盛んに行われた。都市が発達し,現在盆地にみられる都市の原型が形成された。これら文化の担い手はネワール族で,今日までそのネワール文化遺産は各所でみることができる。仏教・ヒンドゥー教が信仰され,ジャスティティ=マッラ王(在位1380〜94)によってカースト制がとり入れられた。カースト制はその後ネパール独得の変化をとげ,現在にいたっている。17〜18世紀になるとラシープート系のタグールカーストがインドから山地へ移住し小王国が各地に出現,カトマンズの西,ゴルカの王プリティヴィ=ナラヤン=シャハ王は1769年カトマンズ盆地のマッラ王朝を倒し,ゴルカシャハをたて,3代にわたってネパール各地を平定し国家統一をなしとげた。1814年にはイギリスの東インド会社と衝突,1816年にセゴーリ条約を結んで現在のネパール国境がほぼ確定された。このときからイギリスはゴルカ王朝(グルカともいう)と戦火を交えるよりは,山地の強力な兵士を植民地経営の傭兵として使う方が得策であるとし,以後今日までゴルカ傭兵はつづいている。19世紀中ごろからラナ一族による専制政治が始まり鎖国政策が実施された。1951年トリブバン王による開国,近代国家への歩みを始めた。1960年代マヘンドラ国王によってパンチャヤート制が導入された。村落・都市パンチャヤート―郡―全国とピラミッド型に積み上げられ,選挙によって各パンチャヤートの代表が選ばれ,全国パンチャヤートが立法府であるが,最終決定権は国王にある。
【民族と文化】ネパールは唯一のヒンドゥー教国である。海抜100mの亜熱帯から5,000mの高地まで高度によってさまざまな民族が住み分けている多民族国家である。1,800m以下ではインド=アーニリアンで,ネパール語を母語とするヒンドゥー=カーストであるバフン(ブラーマン)やチュトリ(クシャトリア)が稲作をおもにし,全国的に分布している。インドのカーストとは違って,中間カーストを欠き,職業カースト(鍛冶屋・仕立屋など)はもっと高地の山地民の村々にも住みついている。高度1,200mから3,000mぐらいのあいだにはモンゴロイド=チベットビルマ語系のリンブー・ライ・グルン・タマン・マガールなどの山地諸民族が分布する。固有の言語と文化をもち,シコクビエ・ムギ・トウモロコシなどの雑穀を主とする畑作と,水牛・牛・ヤギの牧畜とを生業としている。伝統的な固有の宗教をもち,シャーマンが祭や呪術をとり行うが,ヒンドゥー教の影響も強く,ヒンドゥー教と固有信仰の重層信仰がみられる。伝統文化を維持しながらも,ヒンドゥー=カーストも含めたネパール文化ともいうべき文化が形成されつつある。3,000m以上のヒマラヤ高地にはチベット諸族が分布する。なかでも有名なのがシェルパ族で,登山隊のガイドの代名詞となっている。シェルパは15〜16世紀に東チベットから移住してきた人々で,最も来歴のはっきりしている民族である。チベット人はチベット仏教(ラマ教)を信仰し,ムギ・ソバ・ジャガイモなどの畑作を小規模に行うが,ヤクやヤクと牛の交配種であるゾラ,羊・ヤギなどの牧畜と商業活動に依存する度合いが大きい。牧畜形態は放牧・移牧が主となっている。
【経済】国民の94%が農林水産業に従事し,自給自足的生産を行っている。農業の GNP に占める割合は60%,工業は4%にすぎない。山地の耕地面積と人口はともにタライを上まわるのに,食糧生産高の67%はタライで生産されている。今後タライの開発がますます重要になるが,余剰力が低下してきている。交通通信施設の未発達,山地の自然破壊,外国援助に頼らざるをえない財政基盤の弱さ,人口増など,この国の経済の見通しは決して明るくない。
〔参考文献〕川喜田二郎編『ヒマラヤ』1977,朝日新聞社
D.B.ビスタ,田村真知子訳『ネパールの人々』I・II, 1982,古今書院
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