●猫の歴史 ねこのれきし
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野生のイヌの種類は今日では非常に少なくなっていて,オーストラリアのディンゴ犬,ニューギニアのパプア犬,インドからビルマ・タイ・エジプト・バルカンにかけてわずかに棲息しているパリア犬ぐらいなものだが,この中でもディンゴ犬は昔は人間に飼われていて,それらの民族とともにどこからかやって来て,飼い主である民族の滅亡で野生犬となったものとみられており,そういった意味からすれば純粋の野生犬(やまいぬ)とはいえない。北極地方にはエスキモー犬やハスキー犬などで野生化したものがいるが,これなどもかつて人に飼われたことのある半野生犬である。そこへいくと人間にまったくかかわりをもたない野生ネコは多い。今泉吉典博士によると,ネコ亜科はチーター族・ヒョウ族・ネコ族に分けられ,ネコ族はさらにオオヤマネコ・ピューマ・リビアネコ・ヒョウネコ類に細分されるというが,いま世界で純粋の野生ネコと目されるものにはカラカル・オオヤマネコ・ボブキャット・マーブルキャット・ボルネオヤマネコ・マヌルネコ・リビアネコ・ヨーロッパヤマネコ・ジャングルキャット・サーバル・ゴールデンキャット・ジャガランディ・コドコド・パンパスネコ・ジョフロイネコ・ジャガーネコ・マーゲー・オセロット・スナドリネコ・サビイロヤマネコ・ベンガルヤマネコ・マライヤマネコ・イリオモテヤマネコなどがおり,その分布もオーストラリアを除く世界中に広がっている。ではなぜネコの仲間はこれほど世界中に広がったのだろうか? ネコ類ネコ亜科の直接の先祖は食肉目のミアキスという古代獣から発し,第3紀に栄えたニムラブスという動物であるとされている。この動物は後足にも5本の指を持ち(ネコでは4本),顎が長くて歯の数が多く,現在のジャコウネコに似ていた。そして獲物の捕りかたも頭の骨をかみ砕くといった原始的なやり方だったから,大きな獲物を捕ることはできなかった。そのためか,トラやライオンのような大形のネコはこの系統からは生じていない。この種はやがて絶滅し,代わって現れたのがマカエロズス亜科で,この代表的なのが上顎の犬歯が発達して短剣のようになり,顎の下にまでずっと伸びたサーベル=タイガー(剣歯虎)の仲間で,スミロドンなどがそうである。この牙は丈夫だったのでマンモスやサイといった厚皮獣でも殺すことができた。そこで第3紀の終わりから第4紀の初めにかけて大発展し,今日のライオンやトラに劣らない大型のものが出現した。このマカエロズス亜科から少し遅れて中新世の中ごろにネコ亜科は現れた。最初のころはネコ亜科は小型であったので,マカエロズス亜科には太刀打ちできず小さくなって生きていたが,第4紀になるとネコ亜科からも大型のものが現れるようになり,この方はマカエロズス亜科よりは頭脳がずっと発達していて身が軽く,攻撃方法も獲物の脊髄を切断して殺すという効果的なやり方だったので,鈍重であまり利口でないマカエロズス亜科をだんだんと圧迫駆逐し,今日のネコ仲間の繁栄をもたらしたのてある。【家畜化されたネコ】ネコが人間に飼われるようになったのはいつごろ,そしてどこであったのだろう?
ネコが家畜化された最古の証拠として,今日エジプト学者たちは,エジプトの第6王朝の墳墓の壁画にネコが描かれており,それ以前に描かれたものが発見されていないところから,ネコが人間に飼われるようになったのは紀元前2600年ごろだろうといっている。野生のネコの家畜化はヌビアで行われ,それがエジプトへ導入されたという説もあり,そうだとするとさらにだいぶ前からネコは人間の生活の中に入り込んで来ていたと思われる。しかしネコはイヌと違ってあくまで人間を共生の相手として選んだのであり,たとえ壁画に描かれていたからといっても,直ちにイエネコとして完全に家畜になっていたかどうかは疑問である。はっきりしているのは第18王朝または第19王朝といわれるメリメリの墳墓から発掘された大理石の石碑に,一人の女性が腰をかけている足もとに1匹のネコが座っている絵が彫られているが,これはイエネコであることは間違いないだろう。エジプト人はネコに限らずタカやチーターなどを飼い慣らして狩猟に使っているが,ネコも狩猟に使っていた。一方ではネコを神として崇拝してもいる。ネコが全世界の人々によって愛され飼育されるようになったのは,そのしなやかな動作,愛らしい姿態などにもよるが,まず最初はネズミを捕らえて,人間が汗してつくった作物を守ってやったということからであろう。ネコの日本への渡来がいつかは正確な記録がないのではっきりしないが,徳川時代に書かれたものなどによると,インドの仏教が中国に伝わった際,仏典をネズミから守るためにネコをそばに置いた。その伝で,奈良朝初期のころに中国から日本へ仏教が伝わるとき,経典とともにネコが渡来したとある。あたっているかもしれない。しかし,日本民族出現以前から日本には野生のネコは棲息していたから,あるいは半野生のネコが人間に近づいていたことも想像できる。