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●人情本 にんじょうぼん

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 化政期から明治初年に出された,恋愛を主題とした通俗的な小説。美濃判半裁二つ折りの大きさで,半紙本より小さく,中本(ちゅうほん)とも呼ばれた。遊里生活・通(つう)意識を描いた洒落本が弾圧を受けて,市井の哀れな恋物語に変化,泣本(なきほん)とも呼ばれた。代表作家為永春水が『春色梅児誉美(うめごよみ)』(1832〜33)で,「江戸人情本作者の元祖」と称され人情本の名が定着した。恋愛物語などの人情を描いて,合巻(ごうかん,草双紙)とともに庶民に歓迎され,多く貸本で読まれた。天保年間が最盛期で,代表作は『春色梅児誉美』のほか『春色辰巳園(たつみのその)』『春告鳥(はるつげどり)』などいずれも春水の作。作者にはまた鼻山人(はなさんじん)などもいる。天保改革で大弾圧を受けたが,人情や市井風俗の描写,地の文と会話文との整った文体は物語の構成において,明治の恋愛小説の先駆となった。