●人間国宝 にんげんこくほう
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重要無形文化財の保持者として認定された者(個人)の俗称。この制度は,1954年(昭和29)の文化財保護法の改正によって実現し,今日に及び,1985年2月現在,芸能関係33人,工芸技術関係29人の合計62人を数える。文化財保護法では,〈無形文化財を演劇・音楽・工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとって歴史上又は芸術上価値の高いもの〉と規定するとともに,さらに〈文部大臣は,無形文化財のうち重要なものを重要無形文化財に指定することができる〉,その指定をするに当たっては〈当該重要無形文化財の保持者又は保持団体を認定しなければならない〉と明示している。つまり,法的にはいかなる芸能や工芸技術の技を重要無形文化財に指定するかと,だれをそれの相伝し体得する保持者として認定するかとを区別しているのであって,2段構えなのである。しかし,重要無形文化財の指定に際して,同時に保持者を認定しなければならない建前をとっているから,重要無形文化財の指定に際して,当該の技の保持者として認定された者が死亡して空白となれば,改めて保持者を認定しなおさなくてはならない。無形文化財は全国に無数にあるから,そのなかから国が重要だと価値付け・指定するには,それなりの基準によることはもちろんで現行の指定基準は,芸能関係では〈音楽・舞踊・演劇その他の芸能〉で,〈芸術上特に価値の高いもの〉〈芸能史上特に重要な地位を占めるもの〉〈芸術上価値が高く,又は芸能史上重要な地位を占め,かつ地方的又は流派的物色が顕著なもの〉に該当するものなどと決められている。また,工芸技術関係では,〈陶芸,染織,漆芸,金工その他の工芸〉で,〈芸術上特に価値の高いもの〉〈工芸史上特に重要な地位を占めるもの〉〈芸術上価値が高く,又は工芸史上重要な地位を占め,かつ地域的特色が顕著なもの〉に該当するとしている。これら指定基準により,具体的には,芸能関係では能楽の能シテ方・能ワキ方・能囃子方・狂言など,文楽の人形浄瑠璃文楽太夫など,歌舞伎の歌舞伎立役・女方など,音楽の尺八・箏曲など,舞踊の京舞などが指定されており,また工芸関係では,陶芸の志野・瀬戸黒など,染織の有職織物・友禅・長板中形など,漆芸の蒔絵・キュウシツ※注1※など,金工の茶の湯釜・日本刀など,木竹工の木工芸・竹工芸,その他などに指定が及んでいる。これら芸能・工芸技術の種別ごとの保持者には,認定基準のあることはもちろんで,芸能関係では,指定の芸能または技法を高度に体現できる者,指定の芸能または技法を正しく体得しかつこれに精進している者,二人以上の者が一体となって指定の芸能または技法を高度に体現している場合には,これらの者が構成している団体の構成員と限定している。工芸技術でも同様であって,指定の工芸技術を高度に体得している者,指定の工芸技術を正しく体得しかつこれに精進している者,二人以上の者が共通の特色を有する工芸技術を高度に体得している場合には,これらの者が構成している団体の構成員に限ると規定している。重要無形文化財の種別によっては,認定者が一人である例が多いが,二人以上となることもあり,後日追加認定となることもあるわけである。これら重要無形文化財の保持者の認定に当たっては,いわゆる人間国宝ないし姿なき国宝として,こと生存している人間に関係するので,文化庁で十分調査検討をするのはもちろん,定められた基準に照らし,文化財保護審議会に諮問し,その答申をへて決定するなど慎重な手続きをとっているのである。また,重要無形文化財の保存の一助ということでその保持者として認定された個人に対して,重要無形文化財保存特別助成金が支給されることになっている。ただ,この助成金支給は,ある栄誉を伴う年金制度のように考えられがちであるが,あくまでも認定者の芸能・工芸技術の技を保存すべく,その練磨向上に要する経費の一部を助成するのが趣旨であることを見過せないのである。〔参考文献〕重要無形文化財保持者会編『無形文化財要覧』1977
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