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●入社式 にゅうしゃしき

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 英語のイニシエーションの訳語。ある特定の集団へ加入する際に課せられる儀式のこと。通過儀礼。未開社会などの共同体内部における成人式などのほか,秘密結社・宗教的組織への入門のための儀礼を総称していう。多くの場合,入社すべき集団が組織の律法に対して誓約を行うとともに,精神的な,あるいは肉体的な試練を課せられる。

日本では,若者組に代表される年齢集団の入社式や,宮座に代表される宗教的組織への入社式が民俗学上注目される。また,沖縄地方におけるアカマタ・クロマタやイザイホウなどの神事に事例がみられる。

【未開杜会の入社式】未開社会では年齢階梯制が組織されているため,入社式がすむと青年戦士階梯に属し,その共同体(部族)の軍事的な機能を担うことになる。入社式の特徴としては,男子の場合は家族・親族(とくに母親)との訣別,隔離された状態や旅を通じた過酷な心身の試練,仮死と再生を象徴的に体験するための儀式,刺青や抜歯その他の身体上の変工,幼名から成人名へ名前を替えることなどがあり,割礼を伴うことも多い。その後は帰属する集団で部族の伝統的慣習を学習する。結婚するまでは一連の入社式(通過儀礼)を繰り返すことが多い。女子の場合は,初潮の儀礼がその入社式(成女式)となっており,結婚の資格が認められる。女子にも割礼を施す部族がアフリカに存在する。快楽防止のためクリトリスを切除するのである。男子の入社式における心身の試練には,驚嘆に値するものが多い。たとえばニューギニアのある部族では,10m以上もある塔から足首に1本の命綱をつけただけの少年を地上へ突き落とす儀礼が行われた。少年の身長と命綱の長さの和が,ちょうど塔の高さくらいになっているので,諸関節がふつう以上に頑健ならば,死んだり片輪になることはないらしい。落下時の異常な体験は“死と再生”という文化人類学上の重要なテーマと関連している。

【秘密結社の入社式】秘密結社あるいは宗教的組織のイニシエーションという場合,そこには二つの側面がみられる。一つは入門のための儀式であり,もう一つは秘儀の伝授のための儀式である。前者については,仏教における剃髪・キリスト教における洗礼などがあげられ,後者については,密教における伝法灌頂があげられる。ある階梯への入門がすなわち新しい秘儀の伝授に繋がるのが,秘密結社におけるイニシエーションの特色となっている。ここでは有名なフリーメーソンの入社式について書くこととする。フリーメーソンへの新入会者は,まず“反省の部屋”に入れられ,種々の象徴物の置かれたその部屋のなかで「自主的に死に,過去の生活に訣別をつげる」ための精神的営為をへて再生する。それから「人間が神に負うところのものは何か」「人間が自分自身に負うところのものは何か」「人間が他の人々に負うところのものは何か」という三つの問いに答え,誓約する。その後,試練と誓約が繰り返され,新入会者が「光を受け」てメーソンとして入社すると,同志によって剣先をむけられる,といった内容である。練金術的象徴に基礎を置くフリーメーソンのイニシエーションには種々の段階がある。

【日本の入社式】日本では,若者組という年齢集団への入社式が知られる。村落の年齢集団としてはほかに子供組・壮年団・年寄組などがあるが,ことに若者組は,祭礼への奉仕・村内の警備など各種の労役を担う村落自治の中核としての性格が濃い。若者組への入社に際しては,厳しい若衆条目の読み聞かせ,三角薪へ坐わらせるなどの試練を課す地方もあり,また条目に違反した場合の制裁もきついなど,一人前の村民として鍛えられる成人式としての性格をもつ。その一方では,独身者の集団として寝宿など男女交際の場を提供する場合も多く,結婚を機に若者組を脱退するのが慣わしとされた。現在では,町の青年団といった形でその片鱗を残すのみであり,むしろ大企業の新入社員教育に往時の儀式的厳格性が甦っている。