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●日本商工会議所 にほんしょうこうかいぎしょ

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 現在の日本商工会議所は,1953年(昭和28)8月に成立した商工会議所法の第3章の規定にもとづく,日本全国にわたる各地域の商工会議所の連合組織である。そこでまず商工会議所の歴史的形成過程からみてゆくことにする。

商工会議所の歴史】日本における商工会議所の創設と進展は,欧米諸国における商業会議所の機構と活動とを範としてきたものである。

 [1]欧米における商業会議所の歴史

 欧米における商業会議所は,中世の商人ギルド体制の衰退に応じて登場した。14世紀に入るころにはギルドの商業独占の弊害が顕著になるとともに,やがて問屋制家内工業の発達に伴って新興商工業者階層が出現し,内外から特権的な業種団体としてのギルド体制の崩壊を促し,近代的自由主義経済を基盤とする商工団体として商工業全般の利益の増進をめざす商業会議所が現れることになったのである。

 世界で最初の商業会議所は,16世紀半ばにマルセイユの主だった商人たちに市会議員などが加わって設立された,任意団体としてのそれであるといわれている。この任意組織の伝統はその後,英米系の商業会議所に受け継がれ,まず1768年にニューヨークの商人たちが,航海条例や印紙税法などをめぐってイギリス本国に反対運動をおこし,貿易都市ニューヨークの経済的利益を守るための組織としてニューヨーク商業会議所を創立した。イギリス本国においても,1783年にグラスゴー商業会議所が,アメリカ独立戦争に際しての戦時課税や商業統制に反対して結成された。また1820〜40年代におけるマンチェスター商業会議所の穀物法撤廃運動は有名である。英米系の商業会議所は現在でも任意加入,任意脱退の会員をもって組織される任意団体の性格が強い。

 これに対して欧州大陸系の諸国では法的会議所の制度が支配的である。それはまず1700年にフランスにおいて,勅令によってダンケルクの商業会議所と中央の最高商業会議が設立されたのに始まり,翌年には全国の10カ所に地方会議所が設立された。これがナポレオン戦争によってドイツ・イタリア・オランダなどに波及して,大陸系統の商業会議所の流れがつくられた。これらは商工業者によって選挙された議員をもって組織され,商工業者の法的代表機関となって政府の諮問に答え,公法人として行政機構の一部を担い,その経費は租税でまかなわれることが多い。

 [2]日本における商工会議所の歴史

 日本の商工会議所のはじまりは,1878年(明治11)に東京・大阪・兵庫(神戸)と相次いで認可された商法会議所であるといえる。まず東京商法会議所は,渋沢栄一福地源一郎大倉喜八郎・益田孝らの有力商工業者を発起人として設立された。これには,富国強兵・殖産興業をめざして商工業の保護育成をはかるのに,協力を求むべき有力な業界組織の不在に困惑していた時の政府の強い慫慂(しょうよう)があったといわれている。翌年より福岡・堺・長崎・大津・岡山・熊本をはじめ各地に商法会議所(商工会と称したものもあった)の設立が相次いだ。

 商法会議所は英米系統の制度にならい,法律によらない私設の商工団体であったが,時には政府の諮問に応じて重要経済問題について復申も行い,商工業の発達に資すべき建議を提出し,商工事情を調査して当局や会員に有益な報告・資料を配布するなど,現在の商工会議所の事業と変わらない活動をしている。その後,1890年(明治23)の商業会議所条例の制定によって,日本の会議所制度は,初めて法的基礎を得,商業会議所が法人としての地域経済団体であることが規定されるとともに,全国組織として商業会議所連合会が結成された。さらに1902年(明治35)の商業会議所法をへて,1927年(昭和2)の商工会議所法によって名称を商工会議所と改めるとともに,文字どおり商工業の全般を代表する地域総合経済団体としての組織を整備し,〈商工業の改善発達を図るを以て目的とす〉と目的を明示された。同時に従来は任意組織であった全国組織も,本法によって新たに法律にもとづく日本商工会議所として設立されることになった。しかし1943年には,全国の144に及ぶ会議所はいっせいに解散して,戦時経済下における国策協力機関として都道府県単位の商工経済会に改編されて終戦を迎えた。戦後,一連の経済民主化措置のなかで,商工経済会が解体され,アメリカ式の会員組織任意団体の商工会議所として再生され,1952年には日本の財界は,大企業および総資本の立場を代表する経済団体連合会経団連),中小企業を含む地域総合組織およびその連合体としての日本商工会議所日商),労使問題に対処するための経営者側の組織である日本経営者団体連盟日経連),経営者個人加盟の組織として進歩的な若手経営者を中心に結成され,経営理念の探求や経済政策の提言を目的とした経済同友会の4団体に再編成されて現在にいたっている。

商工会議所の組織と活動】現在の商工会議所および日本商工会議所は,1953年に成立した商工会議所法にもとづいて組織され,運営されているものである。そして会員制度と議員制度とを折衷併用した特殊法人と規定され,同法第6条は〈商工会議所は,その地区内における商工業の総合的な改善発達を図り,兼ねて社会一般の福祉の増進に資することを目的とする〉と規定して,商工会議所が業種・業態・規模にかかわらず,すべての商工業を包括する地域総合経済団体として,総合的な観点から商工業の発展をはかるとともに,福祉社会の建設にも寄与すべき課題をもつ点において,他の経済団体と異なる一面のあることを明記している。

 同法第9条によれば,商工会議所の主な事業は,意見を公表して国会や行政庁などに具申・建議すること,行政庁などの諮問に答申すること,商工業に関する調査研究を行い,商工業に関する情報・資料を収集・刊行すること,商品の品質や数量,商工業者の事業の内容などに関する証明・鑑定・検査などを行うこと,輸出品の原産地証明,商工業に関する施設の設置・運営,商工業に関する講演会や講習会の開催,商事取引に関する仲介・斡旋,商事取引の紛争に関する斡旋・調停・仲裁,商工業に関する相談・指導,商工業者の信用調査等々,商工業に関する幅広い権限をもって活動を行うのみならず,広く社会一般の福祉の増進に資する事業や行政庁からの委託事務の遂行も商工会議所の事業と規定されている。1977年現在,日本の市の数645に対して商工会議所数は475で,1会議所あたりの組織率は平均26%となっている。

【日本商工会議所の組織と活動】日本商工会議所商工会議所の連合体として,商工会議所を会員として構成され(商工会議所法第66条),〈全国の商工会議所を総合調整し,その意見を代表し,国内及び国外の経済団体と提携することなどによって,商工会議所の健全な発達を図り,もってわが国商工業の振興に寄与すること〉(同第64条)を目的としている。第65条に規定された事業内容は,全国の商工会議所の意見を総合してこれを公表し,国会や行政庁に具申・建議すること,行政庁などの諮問に答申すること,国民経済および国際経済に関する調査研究,情報・資料の収集・刊行,国の内外にわたる商事取引に関する商工会議所の事業の連絡または斡旋,国際商事取引の紛争に関する斡旋・調停・仲裁,商工会議所の活動の指導,国内外の経済団体との提携または連絡,国際親善事業等々,各地商工会議所の事業に対応しつつ,多方面にわたっている。近時全国の商工会議所が取り組んでいる事業活動には,しだいに全国的規模にわたる関連をもつものが増えつつある点からも,また経済活動の国際化がますます進行しつつある点からも,日本商工会議所の役割がさらに重要さを増しつつあるといえよう。また歴代の日本商工会議所会頭には有力な財界人が選任され,組織としての実力を背景に政治的発言力を増しつつあることも注目される。

〔参考文献〕日本商工会議所編『商工会議所制度100年の歩み』1978,日本商工会議所