50音順    検 索

●日本国国会 にほんこくこっかい

アジア 日本 AD 

 日本国憲法下の議会。1947年(昭和22)5月3日に施行された新憲法にもとづき設置された国権の最高機関で,唯一の立法機関。二院制をとり,第一院としての衆議院と第二院としての参議院から構成され,両院とも原則として国民(成人男女)全員の定期選挙によって選ばれた国会議員により運営される。議員の多くは政党に属し,議会運営の主導権を多数党が握る政党政治の形態をとる。

 1889年(明治22)2月11日公布の大日本帝国憲法下における帝国議会でも,両院制がとられ,定期選挙・政党政治制が行われ,議会政治としての形態は打ち立てられていたが,そこになお多くの制限と留保が付されていた点で日本国国会とは異なる。帝国議会では,貴族院は皇族・華族・勅選(天皇によって直接任命された者)・多額納税者・帝国学士院会員よりなる議員によって構成されており,選挙権も直接国税15円以上を納める25歳以上の男子に限る制限選挙制がとられていた(2度の改正をへて1925年に男子普通選挙権,1945年に20歳以上普通選挙権を実現)。また,政党は多くの官僚出身者たちで占められ,国民の代表としての議員の性格もさほど明瞭なものではなかった。さらに天皇大権といい,天皇は陸海軍の統帥・緊急勅令の発布・宣戦・講和・条約諦結・戒厳の宣告など,議会の参与なしに行使できる広範で強大な権限をもっていた。日本国憲法下においてはこのような制限・留保は廃され,議院内閣制と政党政治が十全に行われるようになっている。

 しかし今日の議会政治にも問題がないわけではない。その第1は二院制の問題である。国会の意思は通常両院一致によって決定されるが,第一院としての衆議員に先議権・発議権があること,衆議院の意思のみで決定できる事項がいくつかあること,両院の意思一致が得られない場合最終的には衆議院の決定をもってそれに代えることができるなど,衆議院の優越性が認められている点である。これは新憲法原案段階にあった一院制構想の反映でもあろうが,第二院としての参議院の位置づけと意義もいま一つ明確ではない。そのため議員選出の方法をはじめ,参議院改革の声がたびたびあがってきた。

 第2の問題は,国会が国民を代表するという点である。わが国でも西欧諸国同様,政党政治が行われ,国民の利害はそれぞれの政党を通じて国会に持ち込まれる仕組となっている。つまり,各政党が国民的利害を集約し,国民の支持を背景に政権を担当しているわけだが,政党が政党自身の要求によって勢力を拡大し権力を獲得しようとしたりすれば,国民の利害代弁機能は損なわれる。国民と政党,この二者のあいだには予定調和は存在しない。各政党が圧力団体やまれには大衆運動の動向によって,その動きを掣肘されたりすることも政党政治にありがちな一面といえる。したがって,政党は国民の利益を代表するといっても,現実には国民一般というものはありえず,ある時定の社会階級や社会層,さらにはある具体的な地域や集団の利益代表ということになる。そうしたある具体的なグループなどの直接的利害を代弁する機能は“ドブ板政治”などと呼ばれ,しばしば非難の対象となっているが,これもまた17世紀に政党政治が西欧に生まれて以来本来的に併せもっていた機能にほかならない。

 第3の問題は,冒頭に掲げた国会の本質規定,すなわち国権の最高機関で,唯一の立法機関という規定にかかわる点である。まず[1]に,国権の最高機関とはいっても,象徴天皇制なるものが存在していて,儀式的あるいは栄誉上では天皇が国会より一段上の存在であるかのような形がとられていることである。たとえば国会の開閉に際して天皇の“おことば”が示されたり,外国との交際において,天皇が外国元首と会見することがきわめて重視されたりしている事実がある。その[2]に,国会は政府―内閣が提出する原案を鵜呑みにしていることが多いという点である。内閣は国会で多数を占める政党によって組織されるわけだから,形式上は国会が内閣の上位にあることになる。しかし現実の力関係はその逆で,多数を占める政党と行政を動かす官僚が,実質的な支配権力の中軸となりつつある。その[3]に,司法の独立を旗印としつつ,国会の制定する法律が憲法違反ではないかどうか審査する権限をもつ最高裁判所は国会に対し形式上優位にあり,その意味では国会は国権の最高機関ではなくなるという問題がある。ただし,ここでも政府−内閣が最高裁判事を指名するなど,行政権力の実際上の優位が認められる。以上,国会が形式上は最高と規定されているが,実質においては疑問もあることを述べてきた。

 第4は,立法権の独占という規定にかかわることである。委任立法といって,内閣以下の各行政機関も立法権を行使できる,という定めがある。これは国会で制定された憲法以下の法律を基準としたものに限られるが,政府−内閣など各行政機関の定める具体的な細目規定・実施要項,さらには明文化もされない各省庁などによる「行政指導」といったものが,国会の立法権を下から具体的に規定していく実際傾向(既存法律の空洞化を含む。代表的な例としては独占禁止法など)を否定することはできない。

【国会の構成】国会が活動する状態に置かれている期間を「会期」という。制度上,各会期は独立しているとされ,第○回国会というようにそれぞれ別個に称される。現行法下では,1947年5月20日に策1回特別国会が開かれ,1985年1月25日の第102通常国会にいたっている。原則として,議事はその会期を越えて継続されることはなく,決定されなかった案件は審議未了ということで葬られる。同一会期中は一事不再理であるという原則は,大日本帝国憲法のように明文規定はないものの,事実上行われている。会期が開始される理由によって,通常国会・臨時国会・特別国会に区別されているが,機能上の差異はない。会期中における国会,あるいは両議院の議事休止を「休会」と呼ぶ。大日本帝国憲法下では,政府が一方的に議事を停止することができる「停会」という権限があり,原案を否決されそうになった藩閥・官僚政府の濫用するところであったが,現行法ではこれは廃されている。議員任期終了以前にその資格を喪わせ,会期を終了させる首相権限として「解散」がある。戦後日本史上で知られるものとしては,1948年第2次吉田内閣によるいわゆる“なれあい解散”があった。次に常設的な機関として,16の常任委員会があり,ここでの審理によって各法律案の死命がほとんど決せられるといっても過言ではない。議長・副議長・各常任委員長・事務総長などを,国会役員と呼ぶ。また両議院には議院法制局が付置されていて,法律案件の整備という業務を受けもっている。国会図書館は,議員図書館としての役割をも担っており,各議員が専門的な調査や検討を要するときの資料提供機関としての従割を果たしている。

【国会の権限】国会は法律の制定権をもっているが,大日本帝国憲法下にあった天皇大権が廃されたため,その範囲はかなり広くなっている。また,国権の最高機関という建て前のため,憲法改正の発議,予算制定などの財政上の権限,条件の承認,内閣総理大臣の指名,内閣不信任権などを行うことができる。議員懲罰権や行政機関に対する国政調査権,判事に対する弾劾裁判権などももっている。衆議院と参議院の意思の一致をみないときは,両院協議会を設けるという制度もある。

【国会の手続】議事および議決を行うためには,定足数が必要である。本会議の場合は総議員の3分の1,各委員会の場合はその委員の半数。各会議は公開が原則であるが,現在,両議院内に傍聴者として入るためには,形式的なものにせよ紹介議員が必要であり,ボディ=チェックもされている現状である。表決は,憲法改正の件など特別の場合を除き,出席議員の過半数によっている。しかし議案が委員会の審理において本会議に付する必要なしとされた場合には,その段階で廃案とされる。ただし,休会中の期間を除く7日以内に,議員20人以上の要求があれば,これを本会議にかけなければならず,また他の議院から原案が送付された場合には,必ず本会議に付さなければならないことになっている。

〔参考文献〕辻清明編『資料戦後二十年史 1.政治』1966,日本評論社

末川博編『資料戦後二十年史 3.法律』1966,日本評論社