●鍋 なべ
AD
食物を煮るのに用いる器。古くは堝(なべ)と書く素焼きの土器が用いられていたが,のちに鋳鉄製のものが普及してくる。釜と異なる点は底が比較的浅く,鍔(つば)をもたないかわりに縁の両端に耳があって,それに弦が掛けられることである。鍋底には,安定して置けるように小さな足が3カ所ついており,これも釜にはない。それは釜がかまどにすえるものであるのに対して,鍋は下げ鉤(自在鉤)に掛けて囲炉裏で用いるためである。鍋の形の種類は多く,大和鍋などのように地名をかけて呼ばれている。鍋は水をたっぷり含ませた雑炊や汁物を煮込むのに適しており,日本人の伝承的な食習とよくみ合った調理器具であるといえる。だから「手鍋さげても」ということばに示されているように,庶民生活になくてはならないものであった。使い込んで底に穴があくと鋳掛屋に修理させ,割れたりして使用できなくなると,それを鋳物屋にもち込んで,手間代銀などをつけて新しいものと交換した。回収された古鍋は再び鋳返された。