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●流し雛 ながしびな

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 三月節供雛人形を川や海へ流す行事,またその人形をいう。雛人形は,本来身のけがれや災いを託して流すための祓いの呪具としての人形であった。毎年雛人形をとり出して飾る風が盛んになったのは江戸中期になってしだいに豪華な工芸的人形がつくられるようになってからのことだった。雛人形をいつまでも飾っていると娘が縁遠くなるなどというのは流し雛の時代の名残りだろう。流し雛の習慣は各地に広く行われていたようだが,今にこれを伝える所は限られ,鳥取県の用瀬町の例が有名である。この地では土製の頭に赤い紙の衣を着せた一対の雛に菱餅や桃の花枝などの供物を添え,桟俵にのせて子供たちが川へ流す。節供の日ばかりでなく,急病人が出たときなどにもこの雛が流されたという。和歌山県の紀ノ川流域や,その上流の奈良県五条市付近,そして瀬戸内海の北木島などでは,流した雛が,和歌山市加太の淡島神社へ流れ着くという伝承を伴い,淡島信仰とのかかわりが強く意識されている。