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●利根川図志 とねがわずし

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「坂東太郎」といわれ関東平野を貫流して河岸(かし)の人びとに親しまれてきた利根川とその周辺の地理や風俗・戦史・旧跡・文芸・伝説・川魚・植物などについて布川(現茨城県)居住の医師文化人,赤松宗旦(1806〜62)が1855年(安政2)に出した書物。さし絵はやはり布川出身の玉蘭斎貞秀らで,詳細な地図とともに,郷土愛に燃え地域の歴史文化をいとおしむ著者の感慨と,利根川水運の拡大や印旛沼開削や下総開墾などの地域開発への希望を捨てぬこころざしがこもった好著である。さけ漁や銚子から江戸への鮮魚急送便,きつねの嫁入り,手賀沼や印旛沼風土記,佐倉宗吾墓碑,将軍家牧場の野馬取り行事などが精細な筆致で,古文献を使いこなし描写される。川魚を生育し,舟運をささえ,耕地をうるおし「人民をひ益」してきた利根川に対する宗旦の学問的態度は,のちに布川の対岸・布佐で少年期を過した柳田国男が民俗学を勃興させる原点となったといわれる。

〔参考文献〕柳田國男解題版−岩波文庫,原版複刻版−崙書房(流山)。