●年占 としうら
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占いの一種であるが,年中行事に組み込まれ,主として農作物の豊凶や,それに関連して月々の天候・気象などを占うものをいう。家庭や集落で行うものと,神社の神事になっているものとがある。農業は天候・気象の条件に左右される面が多く,人の努力を超える部分があったから,神仏にも祈願し,また占いによって未来を予測したいという念願が痛切であったし,どの品種をつくるかなどの選択を占いによって決することが多かった。年占の時期は,年末から正月にかけて,または小正月や臼伏せに行うことが多く,手段も種々ある。年末から年始にかけて行われる年占に,臼伏せというのがある。これは正月用の餅をついたときなど,まだ餅のやわらかいうちに,盆に米を敷いて幾つかの餅を並べ,一つ一つの餅を早稲(わせ)・中手・晩稲(おくて)などと決め,上から臼を伏せておく。正月になってから取り出してみて,どの餅に米粒が多く付着しているかによって,どの種類の稲種をまけば出来がよいかを占うものである。ときには,餅にカビの生えている状態によって,作柄を占う場合もある。また元旦の若水迎えのとき,供物として持って行った米や豆や餅のかけらを,水のなかに落として占う方法がある。心のなかで作物の種類を決め,その米粒がゆらゆら落ちたか,一直線に沈んだかをみるのである。その判断は主観的なもので,特定の基準があるわけではない。若水迎えは,一家の主人が豆占になって行うのが古風な形であったから,文字通り一家の浮沈をかけて,米粒の行方をみつめたものである。
豆占も広く行われる年占の一種である。なまのダイズを使うことが多い。期日は年末から節分にいたるまで,家によって一定しない。いろりの灰をかきならして,12粒(閏年は13粒)のダイズを並べ,1月,2月と決めておく。灰の熱と燃し木の火力で,豆がしだいに焼けてくるが,白く灰になった月は晴天が多く,黒焦げになった月は,雨でプシュッとはじける豆があると,その月は風が吹くなどと,いろりを囲んだ家族たちがはやしたてるのである。別に,茶碗の上からダイズを落とし,はねとぶ方角や距離で占う豆占もある。 粥占(かゆうら)には数種ある。1月15日の小正月に,餅とアズキを加えたアカツキ粥をつくって食べる地方が多く,その粥を利用するのが一般である。ヌルデの棒の先の方の皮をはぎ,十文字の割れ目をつくる。そこに繭玉(まゆだま)団子を一つねじ込んだものを用意する。祝い棒とか粥かき棒とか呼んで呪力あるものと考えられている。この棒で粥をかきまわし,米粒がどの程度付着したかによって,稲作その他の豊凶を占うのである。粥に臼をかぶせておき,臼状せと同じくカビのはえぐあいで年占をする方法もある。
いま一つの粥占は,筒粥とも管粥とも呼ばれるもので,神社で神事として行われる場合と,家庭の年中行事として行われる場合とがあるが,方法に変わりはない。粥を煮るとき,竹かカヤの茎を束ねて入れておく。あらかじめ,早稲・中手・晩稲・大麦・小麦・そば・大根・ごまなどと,それぞれの作物にあてはめておくのである。粥が煮上がってから取り出して割り,中に米粒が多く入っているほど,豊作とするものである。神社で行う場合は,その結果を紙に書いて境内に貼り出したり,1枚刷りにして配ったりすることが多い。
綱引・相撲・的射(まとい)・競馬(くらべうま)・競舟(せりふね)などの競技も,しばしば年占に利用される。綱引や競舟の場合,集落を二つに分けて勝ち負けを競い,浜方が勝てば大漁,岡方が勝てば豊作としたり,一方が勝てば豊作と決めておき,豊作組が勝つことに決まっているような手はずにしている例もある。他の競技でも,代表者の勝敗によって年占をする。トンドなどと呼ばれる小正月の火祭りのとき,煙のなびいた方角によって,豊凶を占うものもある。
〔参考文献〕井之口章次『日本の俗信』1975,弘文堂