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●土佐日記 とさにっき

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 935年(承平5)2月16日以後成立した日記文学。全一冊。紀貫之作。貫之の自筆本は,巻子本一巻であったが現存していない。930年(延長8)正月29日に土佐守に任ぜられた貫之が,4年の任期を終えて934年12月21日に国庁を出て帰京の途につき,翌年2月16日に京都の自邸に帰着するまでの旅の記録。しかし,内容的には人物や場面に多くの虚構を使用し,自由に心境を描いた構成の整った作品である。全編は3部に編成され,1部は12月21日の出発から元日までの10日間で,望郷の念と亡児への愛惜の情などを描き,2部は1月2日から2月5日までの34日間で,航海の危険と海賊の恐怖を絡ませながら,船中の人たちの言動や感情の動きを描写する。そして3部は2月6日から16日までの11日間で,迎える都近くの人たちや隣人の心情を描き,帰京後もやむことのない,亡児への追悼歌を結びとしている。和文を用い,随所に和歌を配置した女性の日記の体裁をとり,日記文学のさきがけとなった。

〔参考文献〕萩谷朴『土佐日記全注釈』1967,角川書店