●動物昔話 どうぶつむかしばなし
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動物を主人公として展開する昔話。一般に,単一の挿話から成り立っているが「猿蟹合戦」や「勝々山」のように複合型の話も含まれている。動物が活躍する昔話はきわめて多いが,それらがそのまま動物昔話をさすわけではない。動物昔話とそのほかの昔話では,そこに登場する動物の性格や行動様式に明らかな相違がみられる。たとえば,本格昔話で,命を助けられた鶴が女に変身して男に富をもたらす「鶴女房」や,蛇が男に化けて女のもとに通ってくる「蛇聟入」に描かれる鶴や蛇は,自然な状態の動物ではない。人間に変身するなど超自然的な能力を持った存在として扱われている。これに対して,動物昔話では,動物本来の自然な姿で登場するのがふつうである。また話の中ではつねに主役の座を占めているが,ほかの昔話では動物は脇役として登場するケースが多い。動物昔話の分類は,研究者の立場によって基準が異なり,必ずしも定まってはいないが,国際的な分類基準としては,フィンランドの民俗学者アールネの作成した『昔話の型目録』に,アメリカの民間説話学者トンプソンが増補した,いわゆるアールネ・トンプソンの『昔話の型』が知られている。このなかで,昔話を動物昔話・本格昔話・笑話・形式譚の四つに分け,動物昔話は,野獣,野獣と家畜,人と野獣,家畜,鳥,魚,その他の7項目に分類している。柳田国男の『日本昔話名彙』では,完形昔話と派生昔話に大別し,派生昔話のなかを,因縁話・化物話・笑話・鳥獣草木譚・その他に分類しているが,その鳥獣草木譚が動物昔話に相当するもので,63の話型を収めている。柳田の分類案では,派生昔話はその名が示すように,主人公の一代記風に構成された完形昔話から派生し,独立したものと説かれている。しかし,動物昔話を単純に完形昔話からの派生に求めるのは困難で,発生と成立には多様な要因が考えられる。関敬吾の『日本昔話大成』では,動物昔話・本格昔話・笑話の3部を設け,動物昔話では,動物葛藤・動物分配・動物競争・動物餅競争・猿蟹合戦・勝々山・古屋の漏・動物社会・小鳥前生・動物由来・新話型の11項目を立て,117話型を収めている。関はまた,動物昔話の種類について,動物昔話一般・動物寓話・動物叙事詩・動物笑話・動物伝説の五つの分類案をあげている。わが国に伝承される動物昔話を大きく把握すると,動物の習性や形態などの由来を説くものと,動物相互の葛藤を描くものとが主流をなしている。動物の由来を説く話は,諸外国では自然伝説とか動物伝説とも呼ばれる。動物以外の自然物の起源を対象としたものは,伝説の範ちゅうに入れられるが,動物の場合は一般に昔話として扱われている。わが国では「時鳥と兄弟」「郭公と母子」「雀孝行」「馬追鳥」など小鳥の前生を語るものが多く,その結末で鳥の鳴き声や習性,あるいは形態的特徴の由来を説明しているが,いずれも種としての動物の由来を説く点に中心がある。前世には人間であったのが何らかの事情で小鳥に化したとする例が顕著で,日本人の霊魂観とも深く関わって伝承されている。動物の葛藤に関するものには「魚泥棒」「尻尾の釣り」「川獺と狐」「百舌と狐」「狐と熊」「猫と鼠」をはじめとして,動物昔話の主要な話が含まれる。話の内容は,擬人化された動物の行動を中心に展開する。たとえば,「川獺と狐」では,川獺が狐に御馳走するが,狐は川獺が訪ねてきても御馳走を出さない。川獺は仕返しに,寒い夜に川に尻尾をつけておくと魚がとれるといって欺く。狐がそのとおりにしていると凍りついて抜けなくなる。ここには,動物に仮託した人間社会の葛藤が描かれている。動物由来譚にみられるような種としての動物にとどまらず,そのなかの特定の動物に焦点をあてながら,人間の性格・欺瞞・軽率・貪欲・悪などといった側面を描き出す点に特徴がみられる。〔参考文献〕柳田國男『定本柳田國男集』6 1968,筑摩書房
関敬吾『日本の昔話』1977,日本放送出版協会
関敬吾『日本昔話大成』1979,角川書店
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