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●投槍器 とうそうき

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槍を遠くの対象にむかって飛ばすための道具で、狩猟採集民が狩猟・戦闘を目的に使用するもの。木製・竹製・骨角製などがあって、オーストラリア、ニューギニア、東アフリカなどの原住民や北米インディアン、エスキモーのあいだで使われているが、分布は比較的少ない。かつては古代メキシコ、南アメリカなどでも用いられていたという。その形状・大きさは地域や種族によってさまざまである。

 全般的に用途としては狩猟が主で、弓矢や棍棒(こんぼう)と組み合わせて使われることもあった。また、アンダマン諸島民のように魚を刺して捕えることにも用いられている。

 石器時代、人類は槍を発明したことにより、狩猟をする者とその獲物である動物との空間をうめて有効に狩猟を行うことが可能になった。だが、たとえ投げつけるにしてもかなり獲物に接近しなければならず、効率および安全性の面でやや劣るのはいうまでもない。その欠点を補うべく考案されたのが投槍器で、槍を遠くへ飛ばし、かつ命中率を上げることができるようになった。

 この投槍器はヨーロッパ後期旧石器時代マドレーヌ文化期(前12000〜前9000)に、すでに使用されていたことが発掘により明らかとなっている。マドレーヌ文化期はいわゆる「トナカイ狩猟文化」ともいわれ、人々は生活のすべてをトナカイに依存していた時代であり、発掘された投槍器もトナカイの枝角に彫刻をほどこしたものである。とりわけ芸術的にも優れているものに、若いヤギの排泄行為の図柄をほどこしたものがある。槍の石突(いしづき)の部分にかみあわせるためのかぎ状突起は、ヤギの肛門から出かかった糞の形をしている。このほか、マドレーヌ文化期の投槍器には鳥・角・馬・羊などを写実的に彫刻したものが多い。

 このマドレーヌ文化期から次のマグレモーゼ文化期に移行するとき、ヨーロッパでは気候の変動に伴う地理的・生態的な環境変化がおこった。つまり森林の拡大などのために人々は、ツンドラ・ステップ・高山植物の3要素をかねた環境で群れをなすトナカイから、オオシカ・アカシカなどの草食獣および猪・野鳥・魚などの個々の動物を狩猟の主な対象とせざるを得なくなり、やがて氷河期末期に考案された弓矢が主流となっていった。そして投槍器は狩猟用具の中心的地位からしだいに遠ざけられていく運命をたどるのである。 エスキモーのあいだで使われている木製の投槍器は、長さ50〜100cm、直径15cmの丸木を半分にたて割りにして、その中央にたてのみぞを掘ったものである。みぞに槍の柄の後部がはまるわけであるが、槍の石突(いしづき)(骨製)をとめる部分に骨製の突起がついている。また前部には握りやすくするためのくぼみと穴がある。これは軽くやや小型であるが、小船に乗って櫂(かい)をあやつりながら、片手で槍を投げるのに適した形状といえよう。

 また、オーストラリア原住民の使用する投槍器は、エスキモーのものと異なり、棒状でしかも一端に結び目のある紐(ひも)がついている。この紐は槍にまきつけておいて、投げるときに回転を与え、命中精度をより高めるためのものである。オーストラリア原住民の投げる動作を見ると、投槍器を握った手のもう一方の手で槍の中央部から前部にかけての一点を支え、巻きつけた紐が槍に回転を与えるときにぶれないようにしているのがよくわかる。これらオセアニア地方で全般的に使用されていた投槍器は、かつては古代ローマ・ギリシア・北アフリカなどでも武器として用いられていたという。その名残りとして、ヨーロッパにはそれをまねたものと思われるオモチャがある。

 このほか、東アフリカ原住民の使用する投槍器のように、筒型をしていて中に差し込んだ槍だけを遠くへ飛ばすものや、また、槍自体に羽根をつけて回転を与えるものもある。


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