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●天工開物 てんこうかいぶつ

アジア 中華人民共和国 AD 

 中国,明の宋応星撰,3巻。1637年につくられた。明末の産業技術史を知るための重要書で,人間の技術が自然の力(天工)を基礎に成り立つという,中国の伝説的技術観が書名となっている。3巻は穀粒・衣服・染色・調製・製塩・製糖・製陶・鋳造・鍛造・製油・製紙・製練・兵器・朱墨・醸造・珠玉などの18部門に分けられ,農業を初め,中国の産業をほぼ網羅し,それぞれの製造工程を手ぎわよく説いている。また理解しやすいように,多数の図版が挿入されている。本書は,中国のほかの技術書と比較して記述の対象の分野が広いこと,自己の観察や経験に裏づけされた実証的態度がみなぎっていること,詳細な数量的記述がなされていること,迷信を排斥する態度が強いことなどが特徴的である。当時,西洋の科学が中国につたわり,その影響を受けて徐光啓の『農政全書』など多数の技術書が出たが,逆に中国にも西洋の技術に劣らない優秀な伝統技術があることを主張するために本書は著された。しかし清朝ではあまり注目されず,かえって日本で珍重されたが,明和年間(1764〜1772)の和刻本が伝えられた1926年(民国15)以後,中国でも急速に本書への関心が高まり,数種類の影印本や校訂本が出版された。

〔参考文献〕藪内清編『天工開物の研究』1953,恒星社

藪内清訳注『天工開物』東洋文庫,1969,平凡社