●デカメロン
ヨーロッパ イタリア共和国 AD
1350年ごろイタリア人ボッカチオが書いた短編物語集。1348年イタリアにペストが流行したとき,花の都フィレンツェを逃れた若い10人(男3人女7人)の貴族が田舎の館に集まり,悪しき世を忘れるために一日一人一話を10日間興じた。この100話の短編集。登場人物は聖・俗・上・下多様で偏見なく,上品な話から下劣な話まであらゆる色調の話を通じて,機知・策略・姦計・うぬぼれ・詐欺など,また多くのイタリア人がもっているいろいろな欲望を赤裸々に諷刺をきかせて見事な絵巻物に描きあげた。そこで“商人の叙事詩”とも,ダンテの『神曲』に比して“人曲”とも呼ばれる。おそらくこれらの説話はボッカチオがすべてを創作したのではなく,これまで世間で語られてきたおもしろ話を上記の形式でうまくまとめあげたものであろう。物語全体が伝える雰囲気は中世を脱して,近代小説の先駆といわれるにふさわしいものである。