●出稼ぎ でかせぎ
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雇用の機会のとぼしい地域から家計補助の目的でほかの地域に一時的に働きに出ること。移民と区別されるのは居住地をもち,就労期間を過ぎた後はそこに帰ることによるが,両者は明確に区別することがむずかしい。ヨーロッパをはじめ陸つづきの諸国間では古くから国境を越えての労働力の移動が行われている。季節間の労働力需要の差の大きい農業部門では,農繁期に季節労働者の定期的な移動がみられる。地中海地方のぶどう摘みや,カリブ海地方のさとうきびの収穫,アフリカ各地の農作物の収穫期などが典型である。また,合衆国西部の農業地帯では合法・非合法に流入する大量のメキシコ人労働者が雇われている。
工業部門では労働者の移動には農業部門ほど季節性はみられない。しかし,この部門でも出稼ぎ労働者への労働力依存は小さくない。
第二次世界大戦後,西ヨーロッパの工業国は国外からの出稼ぎ労働力に大きく依存して経済成長を遂げてきた。これらの国々においては農村における余剰労働力が少なく,また人口の増加も緩慢ないしは停滞している。高度成長期の日本のように,国内の農業地域からの出稼ぎ労働力や,集団就職にみられるような若年労働力に頼ることができなかったこと,また国外から導入した労働力のほうが安い賃金で雇用できることなどによるものであった。
これらの国々への労働力供給源は主として地中海沿岸諸国や旧植民地である。本国においては得られない雇用にめぐまれるばかりでなく,送出国にとっても,彼らの仕送りが貴重な外貨収入源となっている。たとえば1973年では,ポルトガル・トルコ・ユーゴスラヴィアは,9億ドル前後の送金額を得ている。その額はトルコ・ポルトガルの全外貨収入の約50%に,ユーゴスラヴィアでは20%にあたる。
これらの労働者は,ヨーロッパ人労働者のきらう職種を担当しており,劣悪な居住条件・低賃金・言語上の障害・人種的偏見のもとにおかれている。また長期就業者の場合には子弟の教育にも問題をかかえている。彼らは,大都市や工業地帯に集中する傾向が強く,このような地域では,外国人居住者が高い比率に達していて,時として,外国人居住者と住民や自治体当局,さらに外国人居住者相互のあいだに摩擦を生じることがある。
オイルショック後の経済成長の鈍化に伴い,ヨーロッパ諸国に失業者が増加した。各国政府は外国人労働者数を制限することにより,自国民の雇用を確保する方向をとっている。雇用の機会を奪われた外国人居住者が,さらに社会問題となりつつある。南北間格差ばかりでなく,旧宗主国としての立場が負い目ともなり,いわば「植民地経営のツケ」が出稼ぎ労働者問題として現れているともいえる。
中東産油国では石油資源枯渇後を見込んで工業化を推進している。しかしこれらの国々では労働力の不足に悩み,周辺イスラーム諸国から未熟練労働者を,韓国・中国などから技術者および熟練労働者を導入して,工業化を進めている。労働者の送出国側である韓国などでは,低廉で優秀な労働力を武器にこれらの国々の工事に進出している。中国においても,かつての政治戦略としての後進国技術協力からしだいに外貨獲得のための技術・労働力輸出に転換していくものと思われる。
また,中国以外の社会主義諸国においても,西側に対する貿易赤字の補填のために出稼ぎ労働者に対する優遇政策をとっている例が多い。オーストラリアで働くチェコスロヴァキア人労働者に対する外貨預金優遇策などがその例である。対ソ経済依存度の高いヴェトナムでは,ソ連に大量の労働者を研修という名目で送り出しているといわれる。
このように,季節的な労働力移動にとどまらない国際間の労働者移動は,経済の国際的緊密化とともにますます増大していくと思われる。その場合,今日ヨーロッパや米西部でみられるような社会・労働問題が深刻化する恐れがある。