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●漬物 つけもの

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 塩,糠,酒粕,味噌,醤油,酢,香辛料などを用いて,野菜,果実,肉,魚などを漬けて加工した食品をいう。なかでも塩が最も多く用いられる。野菜の漬物は世界各国にあるが,とくに寒い地域では冬季間における野菜の保存食品として,よくつくり利用されている。日本は世界的に見て漬物の種類が多いほうで,米飯によく合う。

【歴史】漬物の歴史は古く,乾燥品と並んで人類最古の食品加工法である。わが国では大和時代,すでに塩漬けによる食品の保存が行われていたことが知られるが,さらに古い原始時代にも,海水からとった塩が食物の保存に適していることを経験していたと思われる。奈良時代には茄子,瓜,桃などの塩漬け,平安時代には味噌や醤油,酒に漬けることが行われていた。鎌倉・室町時代には茶の湯や聞香に香の物あるいは香々といって賞味された。茶の湯では食後の口直しに,聞香では嗅覚をいやすためだったという。香とは味噌のことで,味噌は香が高く,味噌漬けを香の物と呼んでいる。江戸時代になると漬物をおしんこといった。これは新しい香の物が新香になったもので,保存食品としての古漬けより,当座漬けを好むようになったからだという。瓜を酒粕に漬けた奈良漬や沢庵漬は古くから行われており,明治になって福神漬けが創案された。漬物は古来家庭の手づくり品であったが,日本が農業国から工業国へと発展してきた今日では,漬物も工業化し,大量に生産されるようになった。

【家庭と漬物】以前漬物は各家庭でつくり,それぞれの家の味があった。漬け方や材料に工夫がなされ,母親から娘,姑から嫁へと代々受け継がれてきた。漬物つくりは家庭の主婦の腕の見せどころで,「嫁にもらうなら漬物上手な娘がいい」といわれることもあった。東北地方などとくに寒い地方では,冬仕度が始まるころ,漬物の準備も行われる。自家制の大根や白菜洗いをし,1斗樽や4斗樽という大きい樽に野菜の漬け込みが始まる。沢庵漬もほとんどの家庭でつくるが,それに用いる大根は干して手で曲がる程度にしんなりさせる。大根を縄で横段々に連らね,軒先にぶらさげているのは,晩秋の田舎の風物詩であった。その他地域によって魚や昆布やくるみなどを数種類入れた漬物など,その種類は豊富である。漬物ができ上がる冬になると,お互に近所呼び合って漬物をお茶受けに寄り合いをする。これは長い冬を室内で過ごさなければならなかった北国では,社交の場であり,楽しみの一つであった。漬物は米飯の副食としても欠くことができないもので,戦前農村では漬物だけで食事をしたり,小学校の子供の弁当の副食も大根の味噌漬だけということも珍らしいことではなかった。子供のころ,夏の昼めしが稗飯に井戸水をかけて味噌漬のおかずであったが,あのおいしさが忘れられないという年配者もいる。3度の食事はもちろん,午前午後のお茶の休けい時間に,漬物は欠かせないものであった。また乳児に歯が生え始めるころ,沢庵のしっぽをもたせると,長持ちするお八つであり,歯のためにもなり,おもちゃにもなった。家族が一年中食べられるだけの量を,何種類かつくって,一夜漬け,当座清け,保存漬けと食べる段階ごとに樽を分けてつくった風習も今は少なくなった。食糧の豊富な現在,そして年中野菜が手に入り,冷蔵庫の利用もできる現代は,漬物だけが保存食ではなくなった。

【世界の主な漬物】中国−香辛料を上手に使った漬物は食欲を進める役割をしている。四川省で大部分をつくっているが,その歴史は古く,貯蔵食品として日常の食事に欠かすことがない存在である。

 韓国−わが国と同様種類が多い。野菜のほか肉類魚介類も使われる。中国同様香辛料を多種用い,防腐作用にもなるので,塩分はあまり多くしない。キムチは漬物の総称である。動物性蛋白源も一緒に入れるので栄養豊富で,宴席にも必ず出す。

 インド−チャツネは香辛料を使ったものでインド料理に欠くことがない。

 ドイツ−キャベツのサワークロート。材料を無駄なく考えた保存食。

 ロシア−塩漬やピックルスなど寒さきびしい冬の保存食。

〔参考文献〕河野友美『つけもの』食品事典第7巻,真珠書院