●直接請求制度 ちょくせつせいきゅうせいど
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地方公共団体の住民に地方行政に直接参与する機会を与えるための手段として,地方自治法において認められた住民の権利。第二次世界大戦後の地方行政の最大の特色は,住民の政治への参与が大幅に認められたことである。その最も著しいものが直接請求の制度である。イギリスの政治家ブライスは,地方自治について地方の政治を住民の意思と責任において行うとともに,住民が民主主義の精神とルールを学ぶ学校であるという旨を述べている。地方の政治を原則的には代表民主制によりながらも,それを補完するために,直接民主制の一つの方式として直接請求制度を定めたのである。地方自治法が認めている直接請求には,条例の制定改廃請求・事務監査の請求・議会の解散請求・議員や長などの解職請求の4種がある。いずれも一定数以上の選挙権を有する住民の請求によって行われる。直接請求には地方自治法の認めるもの以外に,地方教育行政法や農業委員会法などにもある。直接請求の行われた件数は,発足以来約2,500件にも及び,とくに住民運動が活発になった最近は増加の傾向がある。地域開発や町村合併に伴う解職請求が行われたり,「教育委員会準公選条例」(東京,1978)や汚職議員追放と資産公開を柱とする「倫理条例」(堺市,1983)が可決され話題となった。しかし,直接請求は民主政治実現のため重要な意義を有しているのであるが,その濫用はつつしまなければならない。それが一部の者の利益や地域エゴから行われたり,政争のために利用されることになれば,自らの手で自らの首を締めることになりかねないからである。【条例の制定または改廃の請求】条例の制定または改廃の請求は,直接発案または国民発案(イニシアティヴ)の一種ということができる。ただし,地方税・分担金・使用料および手数料の賦課徴収に関する条例の制定または改廃については,直接請求が認められない。地方公共団体の財政的基礎を危うくし,その存在を脅かすおそれがあるからである。条例の制定改廃の請求権者は議会の議員および長の選挙権を有する者である。請求代表者は有権者の50分の1以上の連署(署名は自書であり代筆は不可,捺印が必要)した署名薄を作成して,市町村の選挙管理委員会に提出し,有権者であることの証明を求めなければならない。条例の制定改廃の請求は地方公共団体の長に行い,長は請求を受理した日から20日以内に議会を召集してこれに付議する。
【事務監査の請求】地方公共団体またはその機関の事業の管理・出納・執行に関して監査の請求をする権利である。請求は選挙権を有する者の50分の1以上の者の連署をもって,代表者が監査委員に対して行う(請求手続きは条例の制定改廃請求の場合と同じ)。請求があった場合は監査委員はただちに監査を行う。
【議会解散請求】議会が適切な運営をしないと認めるときに行うものである。解散請求は選挙権を有するものの3分の1以上の連署をもって,選挙管理委員会に対して行う。請求があった場合は,これを選挙人の投票に付さなければならない。投票の結果,過半数が解散を可とするときは議会は解散する。ただし,議会の解散請求は,その議会の議員の一般選挙のあった日から1年間,または解散の投票のあった日から1年間はすることができない。
【議会の議員・長・その他の解職請求】住民は議会の議員・長・副知事もしくは助役・出納長もしくは収入役・選挙管理委員・監査委員等の解職の請求をすることができる。議員および長の解職請求は,選挙権を有するものの3分の1以上の連署をもって,選挙管理委員会に対して請求する。請求があった場合は,これを選挙人の投票に付さなければならない。請求のできない制限期間については議会の解散の場合と同じである。議員・長以外の役職員の解職請求は,議会において,議員の3分の2以上が出席し,その4分の3以上の者の同意があったときは,これらの者は失職する。
〔参考文献〕俵静夫『地方自治法』法律学全集8,有斐閣