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●調理法 ちょうりほう

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 一般に調理法というと,焼く・煮るなどを考えるが,調理法を広義に食料品の加工法とすると,その種類は驚くほど複雑である。調理法は,食料品を何らかの形で加工せずに食べることはないわれわれ人間にとって,多方面にかかわる重要な問題である。今日,世界各地でさまざまな食料品加工の方法がみられるのは,第1に,人類の地理的分布に加え,われわれが雑食性の動物であること,第2に,この雑食性と関連するが,雑多な素材に対応した加工技術というものを,長い歴史を通して発展させてきたことによる。しかもこうした加工技術は通常複数組み合わされるため,その種類は限りなく増大していく可能性を秘めている。

【調理の起源と目的】料理の起源に関しては,中尾佐助氏が,植物の加工との関連を指摘している。すなわち,生でも食べられる肉や魚と違って,植物のなかでも重要なイモ類や米・麦・豆などの種子類は,毒抜きなり,水・熱で加工しないと食べられないわけで,ここに料理の出発点があるのではないかとしている。こうしてみると,調理の目的は第1に,食べられるようにするため,第2に,これに加わるものとしておいしくするため,第3に,さらに保存に耐えるようにするため,という三重構造になっているといえよう。

【調理法の分類】調理法を大きく分けると,第1に生のままの変形,第2に熱処理,第3に醗酵の利用,の三つに分けられよう。第1の生のままの変形としては,より分ける・洗う・皮をはぐ.切る・味つける,などがあげられる。日本の刺身はこのすべてを駆使したもので,第1の部類のなかでは,非常に洗練された調理法の一つといえよう。第2の熱処理にも,さまざまなバリエーションがある。まず直接火を用いないものとして,保存のための食品の乾燥があけられる。次に直接火を用いる場合であるが,これは何を媒介とするかによって,さらに三つに分けられよう。まず空気を媒介としたものに,燻製・オーブンでの調理法などがあり,このうち空気の量を極力少なくしたものが,直焼きである。これにフライパンなどを用いると,炒る調理法になる。次に水を媒介としたものに,煮る,がある。飯を煮ることを日本語では炊くというが,これには蒸らす工程も含まれている。媒介となる水が蒸気の場合,この蒸らす・蒸かす調理法となる。最後に油を媒介したものに,中国料理の炒めるや,天ぷらなどのフライといった調理法がある。第3の醗酵を利用したものは,非常に複雑な化学的反応を経験的に学んできたもので,素材,穀類(パン・酒)から豆類(納豆味噌・醤油),魚(塩辛・馴れずし),野菜(漬物),乳製品(ヨーグルト・バター・チーズ)まで,いろいろなものに応用されている,忘れてならない重要な加工技術である。

 これらの調理技術は,たとえば,小麦を粉にし,水で練り,イースト菌で醗酵させ,焼いてつくるパンのように,通常複数の技術を複雑に組み合わせて応用させている。素材と加工の目的,および加工技術の関連をみてみると,穀類・豆類はそのままでは食べられないので,まず食べられるように,通常,熱加工がほどこされる。大豆に限っては,納豆味噌・醤油など醗酵技術も併用されている。牧畜民は意外にも生乳を飲まないが,これは北欧人を除き大人は乳糖分解酵素が欠乏しているからであり,加工しないとうまく消化されないからであるといわれている。そうすると醗酵を利用した乳製品も,第1に食べるための加工の部類に加えることができよう。ほかの素材はほぼ生で食べられるもので,これはおいしく食べるために,すべての加工技術が駆使されている。また,そのままでも保存できる穀類・豆類などを除くほとんどすべての素材,すなわち生でも食べられるものは,保存のためにも加工されるが,この際にはさまざまな醗酵技術が活用されている。

【調理法と文化】ところで上記の三つの調理法は,料理体系から個々の文化の無意識な構造を解明すべく,レヴィ=ストロースが提案した,生のもの(焼いたもの),火にかけたもの(燻製にしたもの),腐ったもの(煮たもの)からなる「料理の三角形」と対応している。レヴィ=ストロースのいうように,象徴的な意味で焼いたものが生のもの(「自然」)と火にかけたもの(「文化」)の両義性を備えているように,料理の技術は完全に「文化」の側に属しているのではなく,「自然」と「文化」の両方の領域に属し,両者の橋渡しをしているといえる。すなわち,料理するごとにわれわれは日々,人類が「文化」を獲得していった太古の記憶にふれるかのように,「自然」と「文化」との変換を繰り返し経験しているといえる。台所は人類の偉大な実験場である,といわれているゆえんである。

 このように調理法は,人間と文化の問題を考える上でも非常に重要な問題であり,外食産業が成長し,食品加工産業が家庭の台所に進出し,電子レンジなどまったく新しい調理技術が出現している今日,大いに注目されるべき分野であるといえる。

〔参考文献〕中尾佐助『料理の起源』1972,日本放送出版協会

レヴィ=ストロース『料理の三角形』(西江雅之他訳『レヴィ=ストロースの世界』1968,みすず書房)