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●チュノム

アジア ベトナム社会主義共和国 AD 

 字喃。漢字の音義の借用によって造られたヴェトナムの民族文字。ヴェトナム語で“話しことばを表す文字”の意で,字儒(チュニョ)すなわち漢字に対するものである。ヴェトナム人は早くから漢字を使用してきたが,これを利用して自ら言語を表現する文字をつくりだした。これが字喃である。字喃は造手法の上から三つに大別できる。すなわち,漢字の音のみを借用してヴェトナム語を表す仮借形式。たとえば没を“ひとつ”の意のヴェトナム語 mot の字喃とした。次は意味を表す漢字と音を表す漢字を組み合わせてヴェトナム語を表す形声形式。なお,字喃の起源については諸説があり定かではないが,中国の元朝の侵略を撃退して民族主義が高揚した陳(チャン)朝には字喃で書かれた詩すなわち国語詩が盛んにつくられ,阮詮(グエン=トゥエン)の「披沙集」や朱文安(チュ=ヴァン=アン)の「国語詩集」などが代表作である。黎(レ)朝治下の18世紀には閏秀詩人の段氏点(ドアン=ティ=ディエム)の「征婦吟曲」と阮嘉韶(グェン=ザ=ティエウ)「の宮怨吟曲」に代表される双七六八体というヴェトナム独自の詩型による長編詩が著され,19世紀にはヴェトナム文学の至宝と称される阮攸(グエン=ズ)の「金雲翹新伝」の出現によって字喃文字は頂点に達した。しかし,字喃が元来漢字をもとにつくられた文字のため漢字を知らない一般の人々には普及せず,また17世紀以降ヴェトナム語のローマ字化すなわちクォック=グウの普及がおしすすめられたために,字喃は漢字とともに現代ヴェトナム人から忘れ去られようとしている。