●抽象美術 ちゅうしょうびじゅつ
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科学的実証主義を背景とする自然主義の考えは,美術においては印象派の運動に表れる。アカデミーの形式偏重・伝習的類型主義への反動でもあった印象主義は,自然を色彩現象として受け取り,感覚的印象を知的に結合しようとするものであったが,客観的な写実主義から出発した結果,心理的描写に欠け卑俗な表現に陥りやすいものでもあった。こうした傾向への反発は,セザンヌ・ゴッホ・ゴーガンなどに見られる主観的表現として表れる。セザンヌのもたらした形態の要約・整理・抽象化は,自然空間を感覚的なとらえ方により新しい芸術空間へと変えてゆく。立体派の画家たちは,この考えを受け継ぎ発展させ,自由に創造された造形記号を生むに至る。一方,ゴッホ・ゴーガンの影響下に画家の率直な感動を直截に表現したフォーヴの運動は純色の効果と平面的構成という純造形的な要素を取り出す。このように抽象美術は準備され,1912年カンディンスキーにより,形態や色彩の交錯が醸し出す交響楽的諧調によって,内的感情を表出しようとする純粋抽象についての最初の理論化が行われる。以後,抽象美術は多様な展開を始め,ロシアではシュプレマティスム・構成主義などを生む。これらの運動はオランダの新造形主義とともにバウハウスの教育に反映し,以後ドイツ抽象美術の拠点となる。フランスでは抽象美術の発達は遅れ,1930年代にロシア・ドイツから退けられた抽象作家たちを加え「アブストラクシオン・クレアシオン」のグループが生まれ,第二次世界大戦後の抽象芸術隆盛の源となっている。