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●地名 ちめい

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 地名とは土地の名称のことであるが,柳田国男は古典的名著といえる『地名の研究』のなかで,〈地名とは抑も何であるかと云ふと,要するに二人以上の人の間に共同に使用せらるゝ符号である〉とその本質を的確に表現している。この場合の〈符号〉というのは,意味論的にいえば〈記号〉ということになる。そこで,柳田の表現を借りて地名を定義づけると,次のようになる。“地名とは,二人以上複数の人間同士がある特定の土地に共通につけた記号(名称)である”

 地名が記号であるとすれば,それは必ず意味をもっている。本来,地名は私たちの生活上の必要に基づいて出来たものであるから,当初においてはどんな地名もその土地の特徴や性格を表していたのである。その後,地名に込められた意味はしだいに忘れ去られることが多かったが,今日でもなお地名は人間の生活の歴史を投影しているといえる。言い換えれば,地名を手がかりにして人間の過去を明らかにすることができるのである。

【地名の分類】地名は現代の私たちに何を物語っているか。それには地名を分類してみることが有効である。柳田国男は『地名の研究』のなかで,地名を発生年代的に〈利用地名〉〈占有地名〉〈分割地名〉の三つに分類した。〈利用地名〉とは,狩猟・漁労・野生植物の採取など,生活上に利用される土地につけたものであり,最も古い地名である。地形・地物などの自然物によって命名されている。次に生まれたのが〈占有地名〉であると柳田は言う。つまり人々が土地を占有するようになると,それぞれ自分が占有した土地に名前をつける必要が生ずる。その結果生まれた地名を〈占有地名〉という。さらに,その占有した土地を分割することによって生じた地名を〈分割地名〉と呼ぶ。上中下・東西南北・大小・新元という語をつけて分割したものがその代表的なものである。最近の分類では,山口恵一郎のものがよくまとまっている。山口は次の四つに分類している。

 [1]地形語 自然環境を端的に表現するか,または広くこれに因むもの。地形・気象・動植物などに由来する。

 [2]法制語 土地制度や税制,または軍事・政治などに関連して与えられた法制的・政治的な意味をもつもの。古代部民制に由来する地名。調布・一条・二ノ坪・新田名など。

 [3]社会語 狩猟・漁労・農耕または交換経済・共同生活など,生産・流通に関連して発生した社会経済史的な意味をもつもの。開発に因んだ地名は,地形語・法制語と重なることも多い。

 [4]生活語 信仰・民俗・口碑・伝承・衣食住など,生活に関連して発生したもの。釈迦ケ岳などの山の名,庚申・傍示(榜示)など。

 これらの分類のほかにも,鏡味(かがみ)完二の[1]語根型(同じ語根から発生したもの)[2]民族型(日本語の上代語,あるいは他民族の言語に由来する地名。アイヌ語の地名,朝鮮語の地名等)[3]時代型(ある時代に流行した地名。田代・新田など)という分類もある。

【地名研究の課題】従来,地名研究といえば,地理学者や民俗学者の一部と郷土史家が中心であった。しかし最近になって,とくに1980年以降,わが国では地名研究がきわめて組織的に行われるようになってきた。歴史学・民俗学・地理学はいうまでもなく,社会学・文化人類学・国語学・国文学・考古学・教育学等にいたるまで,学際的な研究が進められるようになった。これらの研究の背景になったのは,1962年(昭和37)に施行された〈住居表示に関する法律〉によって,全国各地で歴史的に由緒のある地名が改変されてしまったことへの反省であった。

 私たちの過去の生活を現在から未来につなぐパイプとしての,地名の文化的価値を見直す必要がある。

〔参考文献〕柳田国男『地名の研究』角川文庫

谷川健一編著『現代「地名」考』1979,日本放送出版協会

藤岡謙二郎『日本の地名』講談社現代新書

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