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●地中海式気候 ちちゅうかいしききこう

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 温帯気候のうち,温帯冬雨気候をいい,ヨーロッパ地中海の周辺地方に広く発達しているためにこの名称で呼ばれることが多い。気候分類ではCsで示される。夏季は高温乾燥,雨はおもに冬に降る。これは太陽の季節的移動に伴って中緯度高圧帯が南北移動し,夏季にはこの高圧帯下の乾燥域に入り晴天が続き,冬季にはその外側の偏西風域に入り,低気圧や前線が通過するためである。ゆえに,分布は主として中緯度の大陸の西岸で亜熱帯乾燥地域の外側となり,北アメリカ大陸の太平洋岸カリフォルニア地方を中心とした地域,オーストラリア大陸の南西部およびアデレードからメルボルン付近に至る南岸地方,南アメリカ大陸ではチリ中部地方などである。平均的な年降水量は600mm前後,年平均気温15度前後で年較差は小さい。最暖月平均気温22度以上をオリーブ気候,未満をエリカ気候と細分化する場合もある。ヨーロッパ地中海の場合,さらに局地風によって特徴づけられる。サハラから吹いてくる高温なシロッコ,アドリア海方面にジナルアルプスから吹くボラ,同じような性質の南フランスのミストラルなどがそれである。植生は夏季の乾燥に強い硬葉樹が卓越している。また,年間2,250時間という日照時間は,陽光に飢えている北西ヨーロッパの人々に絶好の保養地を提供し,夏の休暇には多数の人々が訪れ,ニース・カンヌ・モナコ・ドーブロブニクをはじめ多くの観光都市を発達させている。カリフォルニア州ロサンゼルスには航空機産業と野外撮影の多かった映画産業が晴天を求めて進出した。この気候区の農業(地中海式農業)は,多くの一年性植物にとっての生育期間である夏季に乾燥するという大きな制約を受ける。このため,冬の雨を利用した小麦栽培と,夏の高温乾燥に強い羊・ヤギの飼育という組み合わせが中心であった。小麦栽培も一年栽培した後,中耕を伴う休閑を行って地力の回復をはかる一種の乾地農法が主流であり,西ヨーロッパにおけるように牧草を含めて,種々の夏作物の栽培を輪作のなかに取り入れた近代農法は採ることができない。家畜は夏季の牧草不足のため,草を求めて遠距離を移動させる移牧が多い。

 このような粗放的な自給的混合農業を基礎にして,産業革命後,換金作物としてのオリーブ・コルクガシ・ブドウ・オレンジ栽培の比重が増加している。また,灌漑施設の発達が集約度を高めているのが特徴である。しかしながらイタリア南部に多いラティフンディウム制のもとにおける小作地では,資本不足のため集約的農業は発展しない。小麦・大麦などの穀物とオリーブ・イチジク・モモや柑橘類と夏季の高温乾燥に適するブドウの組み合わせはヨーロッパ地中海沿岸地方が顕著で,世界のブドウ生産高の約50%,オリーブ生産高の95%をこの地域が占める。灌漑農法による果樹栽培はカリフォルニア盆地で大発展を遂げた。南流するサクラメント川流域ではシャスタダムの灌漑によりブドウと稲の栽培が,北流するサンウォーキン川流域では,フライアントダムにより,ブドウ・グレープフルーツ・オレンジ類の栽培が行われ,果樹の大農場が分布する。南アフリカ共和国など,南半球の地中海式農業地域は北半球の端境期に出荷できる強みがある。