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●地図(図法) ちず

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 地図とは,地球表面の諸事象や社会的な実質的・抽象的諸現象を抽出し,通常平面の上に縮小して表現したものである。表現される内容は,人間生活にかかわる自然的事象(自然環境)・社会的事象(社会環境)から抽出される。地球以外の天体,たとえば,月や惑星の表面を表現した図を地図という場合もある。また,一般的には平面上に表現されるが,地球儀のような立体面に表現されたものや,地形の凹凸を示したレリーフ=マップを含めることもある。地図表現の特色としては,縮小化され抽象化されて,主として図とそれを補う文字(注記)によって表現されることである。図形(グラフィック)表示される内容は,現実の形状を縮小表現したものと,記号化して表現したもの(地図記号)とがある。一般に,より縮小した地図(小縮尺地図)ほど,記号による表現の割合が高くなる。

【地図投影法(図法)】地図は立体(三次元)である地球の表面を,平面(二次元)の上に表現したものである。このため,ごく狭い範囲を表現するのであれば平面とみなしてさしつかえない(誤差の許容量の取り方にもよるが,約20km四方以内)が,日本全図や大陸図・世界図となると必ず誤差が生ずるようになる。この誤差(ゆがみ)は,立体を一次元低い平面に表現するわけであるから免れることはできない。地球の表面(回転楕円体の表面として扱う)の位置を,平面上の位置に変換する手続きを地図投影法(図法)と呼んでいる。地表上の位置は経緯度で表示されるが,すべての地点を座標変換して地図に表すのではなく,一般には,地球上で標準となる経緯線を地図の上に表示し,他の地物はこれを基準としてその形状を描くことになる。

【地図投影法の種類】平面上に表現された地図は,地球上での位置関係・方位・角・距離・面積が正しく表されているのが望ましい。しかし,実際にはすべて歪みなくこれらを表現することは不可能なので,地図利用の必要性に応じて各種の地図投影法が研究・開発され実用化されてきた。投影法は,それらの特色や開発者の名前などによって円筒図法・円錐図法・メルカトル図法サンソン図法モルワイデ図法などと呼ばれている。これら各種の投影法は,地図の目的や投影面の種類や置き方によっていくつかに分類される。[1]地図の目的による分類 この分類には正距図法・正積図法・正角図法・その他の図法(便宜図法)がある。正距図法は,距離が正しく表現された図法であるが,地球上の任意の二地点間をすべて正しく表現できないので,一般には,ある特定の経緯線や地点からの距離が正しく表現される図法をさす(例としては,正距方位図法・正距円錐図法など)。正積図法は地球上の部分の面積が,その形の歪みはかかわりなく,正しく保たれている図法である(サンソン図法モルワイデ図法グード図法など)。正角図法は,地球上のある地点で二つの方向線のなす角が,地図上でも保たれている図法である(メルカトル図法・正角円錐図法・平射図法など)。その他の図法(便宜図法)は,厳密には正距・正積・正角ではないが,全体として歪みが小さい,極付近まで表現できるなどの利点によって,しばしば利用される図法を含めている(ビンケル図法ミラー図法など)。[2]投影面の種類や置き方による分類 投影面の種類による分類としては,[a]直接平面に投影する方位図法,[b]円筒に投影した後,平面に展開する円筒図法,[c]円錐に投影した後,平面に展開する円錐図法がある。円筒図法と円錐図法は,一般に,地球の中心から投影する心射図法で描かれるが,投射図法の場合は,投影の光源(視点)の位置によって次のように分類する。[i]地球の中心に光源をおく心射図法,[ii]投影面と反対側の地球の表面に光源をおく平射図法,[iii]光源が[i]と[ii]の間(すなわち地球の中)にある内射図法,[iv]投影面の反対側の無限遠から平行光線によって投影した正射図法,[v]光源が[ii]と[iv]の間の地球外にある外射図法。次に投影面の置き方で分類する。[a]投影面が地球と線分,または一点で接する(接方位・接円筒・接円錐),[b]投影面の一部が,地球の中にもぐり込む(割方位・割円筒・割円錐)。また[c]投影面の軸(投影軸)と,地球の南北軸(地軸)との関係によって細分される。[i]投影軸と地軸が一致する正軸法,[ii]投影軸が赤道面のなかにある横軸法,[iii]上の[i][ii]どちらにも属さない斜軸図法である。投影面の種類や置き方は適宜組み合わされて利用され,それに応じた命名がなされる(斜軸割円錐図法など)。このため,開発者などの名前がついている場合や特徴のとらえ方によっては,二つの図法名をもつことになる(正角円筒図法メルカトル図法・正積方位図法=ランベルト正積方位図法・正角方位図法=平射図法)。

【投射図法】投射図法のうち,中心から投影する心射図法は地表に接した地図の中心付近は正しく表現されるが,周辺になるに従って急激に歪みが増大する。このため一般図として利用されることはない。しかし,地表面の任意の二点間を結ぶ最短距離(大圏コース)が直線で表される利点がある。投影面の接点と反対側の地表上に視点がある平射図法は正角性があり,地表上の円は,大きさは異なるものの真円として表現される特徴がある。このため地図ばかりでなく,結晶面の表現などにも利用される(ウルフ網)。正射図法では,地球の半球しか同時に表すことができない。図の中央部の歪みは小さいが周辺では大きな歪みをもつ。太陽や惑星の表面を地球から眺めるのに相当する。直観的なわかりやすい図であるが,惑星面や月面・太陽面の見取図のほかでは余り用いられない。気象衛星“ひまわり”から送られてくる画像も正射図法に類似しているが,正確には外射図法というべきものである。

【円筒図法】地球に接して取り巻く円筒に投影した後,円筒を展開して得られるのが円筒図法である。投影の視点は,一般に地球の中心である(心射円筒図法)。この図法では,地球に接する線上(一般には赤道)では正しく表現されるが,ここから極へ近づくに従って面積・距離ともに急増する。このため実用地図とは言いがたい。円筒図法は,南北方向への伸び率を適切に変換することによって面積を正しくしたり(ランベルト正積円筒図法),距離を正しくしたり(正距円筒図法),角を正しくしたり(正角円筒図法)して,各種の利用に合わせることができる。このうち正角円筒図法は,一般にはその開発者の名に因んだ“メルカトル図法”として知られている。この図法は1569年に24枚の世界図に導入された。この図法の特徴としては,次のようなものがあげられる。[1]子午(経)線はすべて等間隔の平行直線であり,一方,緯線はこれに直交する直線で表され,その間隔は高緯度ほど広くなる。[2]単純な心射円筒図法では,高緯度では経線方向の伸び率よりも,緯線方向の伸び率の方がより大きい。メルカトル図法では,緯線方向の伸び率は経線方向の拡大率に一致させてある。このため,この図法ではある地点での角は正しく地図上に表れることとなる。[3]距離・面積ともに赤道上では正しいが,高緯度になるに従って急増する。すなわち,縮尺は赤道上で最小であり(これが一般にメルカトル図法での縮尺となる),高緯度になるに従って大きくなる。このため,単純に異なる緯度間で距離・面積を比較することはできない。緯度0度と60度の地域とでは,距離で二倍の差となり実用的でなくなる。[4]メルカトル図法の実用上で最も重要なのは海図としての利用である。[2]に述べた性質から,この図上で任意二地点を結んだ直線と経線のなす角度(舵角)を求めることができる。この角度を保って船を進めると,遠く離れた目的地へも到達が可能となる(ただし,この航路は特殊な場合を除いては,大圏航路より長い距離を航海することになる)。[1]〜[4]の特色から派生して,この図法がしばしば利用される理由は,経・緯線が直交する平行直線であるため比較的作図が容易であること,矩形の地図や地図帳の外形とよくマッチする(紙面の無駄が少ない)ことなどがあげられる。一方,逆にしばしば利用される割に看過されやすいのは,高緯度になるに従って距離・面積ともに急増し正しい比較ができないこと,ある地点からの方位線は,南北線を除いて一般に直線とはならず曲線となって表れ,この図法から地球上の方位についての感覚を得ることは難しいことなどである。ミラー図法メルカトル図法と同様に,世界全図としてしばしば利用される図法である。緯度方向への拡大率を抑えて極まで表現できるようにした図法であるが,このためにメルカトル図法のもつ最大の特徴である角が正しい,という性格が失われている。

【円錐図法】一般に地球の中心に視点を置き,地球に接する円錐面に投影をした後,これを任意の線(母線)に沿って切り,展開して平面の地図とするような図法である。経線は極を中心とする方射直線,緯線は同心円として表現される。この地図上で正しく表現されるのは,地球に接する線上(一般に緯線と一致し,標準緯線と呼ばれる)のみである。中心から投影した単純な心射円錐図法は,単純な円筒図法と同様に,地球に接する部分から隔たるに従って歪みが大きくなり,実用的な投影法とはいえない。実用的に利用される円錐図法としては,正距円錐法・正積円錐図法・正角円錐図法である。正距円錐図法は緯線の間隔を正しくした図法で,トレミー図法とも呼ばれ,地方図などとして用いられる。正積円錐図法は,緯線間隔を正積になるようにずらせた図法で,ランベルト正積円錐図法とも呼ばれる。高緯度で東西に広がる地域を表すのに適する。正角円錐図法は,ランベルト正角円錐図法とも呼ばれる。しばしば利用されるのは,二本の標準緯線をもたせ歪みを縮小させた割図法である。南北に狭く,東西に展開する地域の投影に適している。100万分の1国際図や,国際民間航空機関の100万分の1国際航空図などに用いられている。わが国の海上保安庁水路部の海の基本図も,この投影によっている。

【擬似図法】方位図法・円筒図法・円錐図法に,さらに変換を加えて作図した図法を擬似図法と呼んでいる。変化の度合が大きくなると,その区分と一義的には定まらないようになる。擬似図法は擬方位図法・擬円筒図法・擬円錐図法に大別できる。擬方位図法としては,ヴェルネル図法・ハンメル図法・エイトフ図法などがある。このうちハンメル図法は,正積方位図法の横軸法を変形して世界全図としたもので,正積図法である。エイトフ図法は正距方位図法を変形したもので,形状はハンメル図法と類似し,ともに世界全図として利用されるが,本図法は正積ではない。擬円筒図法には,サンソン図法モルワイデ図法ミラー図法などがある。サンソン図法は,中央経線を除く他の経線はサイン曲線で表される。緯線は等間隔の平行直線で,中央経線と赤道の長さとの比は1:2にとる。正積図法である。サイン曲線の性質から,図の中央付近では歪みが小さいが,高緯度の周縁部では距離・角の歪みが大きい。モルワイデ図法は,経線が楕円曲線で表されている。中央経線と赤道との比は,サンソン図法と同様に1:2である。緯線も平行直線であるが,その間隔は正積にするために高緯度で狭まっている。歪みはサンソン図法に比べて低緯度で大きく,中・高緯度で小さくなっている。世界全図や正円で表される半球図として用いられる。サンソン図法モルワイデ図法の類似性に着目し,両者の長所を取り入れた図法がグード図法(ホモロサイン図法)である。両図法は緯度40度44分付近で同じ長さとなるので,これより低緯度をサンソン図法で,これを挟む高緯度側を,モルワイデ図法で投影したものである。それによって,低緯度から高緯度にかけて歪みの小さな投影をすることができる。さらに歪みを小さくするために,この図法は,南北両半球を適当な経度幅に分けた断裂図法として表現される。陸上に分布する現象の場合には海洋を断裂し,一方,海洋の現象を表現する場合には大陸上で断裂させることになる。グード図法は正積図法であり,歪みも小さいので世界図としてしばしば用いられる。ミラー図法は極まで表現できるように,メルカトル図法緯線方向への拡大率を縮小するようにした便宜図法である。擬円錐図法の例としては,ボンヌ図法をあげることができる。この図法では,緯線は等間隔の同心円として表され,経線緯線上に中央経線から正しい距離でとった各点を滑らかな曲線で連ねたものである。正積図法である。標準緯線と中央経線から隔たるにつれて距離・角の歪みは大きくなるので,地方図として用いられれる。

【大縮尺地図に用いる図法】多面体図法は,わが国のかつての5万分の1地形図や20万分の1地勢図などに用いられてきた図法である。地図の中央が地表に接する点であり,この小平面に向かって地球の中心から投影する。地図は経緯線で区切られた小区割であり,図郭の形は厳密には等脚台形となる。各図は投影の中心を異にしているので,何枚もつなぎ合わせるとしだいに地球の表面を覆う多面体となる。1965年以降の国土地理院の2万5千分の1地形図や5万分の1地形図,20万分の1地勢図などに用いられている図法は,国際(ユニバーサル)横メルカトル図法UTM図法)である。横メルカトル図法は,従来のメルカトル図法が赤道に接して円筒を置くのに対し,これと直交する方向に円筒を配置し投影したもので,正角図法である。円筒に接する子午線から離れるに従って誤差は大きくなる。このため国際横メルカトル図法では,中央経線の前後3度ずつ,計6度幅を1度に投影するように決めている。地球表面上は全部で60帯(ゾーン)の地域に分けられる。また,この図法は,全体としての歪みを小さく抑えるために割円筒図法となっている。この図法による地図は,同じ中央経線帯に属すものであれば,一枚の平面につなぎ合わせることが可能である(異なる中央経線帯間では歪みを生ずる)。1帯の実長は,日本付近では東西約460〜580kmの区間である。最も歪みの小さい地域は中央経線から東西に約180km隔たった二本の経線上である。特別の地域を除き,緯度は南北80度の地域までを投影する。この図法は,地形図クラスの縮尺(1万〜10万分の1)の投影法として,現在世界的に広く採用されている。

【地図の種類】地図は,その用途に応じて作製の目標が定まり,用途の多様性に応じて各種の地図が作製されてきている。地図の歴史をかえりみて地図作製の目的を整理すると,[1]地球観・世界観・地理観を地図に書き表したもの,[2]国政の必要上,国土の概況を図示したもの,[3]産業活動の必要性から生まれたもの,[4]生活上の必要からつくられたもの,[5]軍事上の必要からつくられたもの,[6]科学的研究上の必要からつくられたもの,に分類できる。また作製の目的にかかわらず,地図の用途については相互に転用が可能であり,転用できるような多目的な表現内容をもたせている。このため,地図の種類もきわめて多様化している。わが国の地図を例に,いくつかの基準によって分類すると,以下のようになる。[1]作製の方法による分類,[a]基本図(実測図)実際の測量に基づいて作製された地図で,他の地図の基図となる地図,例としては,2万5千分の1地形図・5千分の1国土基本図・地籍図など,[b]編集図・基本図から編集してつくられる各種の地図,5万分の1地形図・20万分の1地勢図・50万分の1地方図・主題図など。[2]表現の内容による分類,[a]一般図(多目的図)・多目的な利用に備えて,比較的多方面にわたって満遍なく描かれた地図で,地形図地勢図・国際図・日本全図・世界全図などをさす。[b]主題図・特定の事象を対象としてまとめた地図で,主題に応じて各種の地図が作製されており,表現方法も多様である。例としては,地質図・土壌図・植生図・地形分類図・土地条件図・土地利用図・人口図・交通図・海図・航空図・道路図・観光地図・統計地図など。[3]縮尺による分類,[a]大縮尺地図・わが国のように比較的地図整備の進んだ国では,1万分の1地形図・5千分の1国土基本図・地籍図など(1万分の1程度以上の縮尺),[b]中縮尺地図,2万〜10万分の1程度の縮尺の地図・2万5千分の1地形図・5万分の1地形図など,[c]小縮尺地図・10万分の1以下の地図,20万分の1地勢図・50万分の1地方図・100万分の1国際図など。[4]表現の方法による分類,地図の表現方法はその用途(内容)に応じてさまざまの表現がなされており,また新たな表現方法が開発されている。たとえば記号式図・等高線図・ぼかし図・けば図・ドットマップ・メッシュマップ・階級区分図・等値線図・流線図・絵図・鳥瞰図・写真図・変形地図など。[5]地図の体裁(組立て)による分類,[a]地図,経緯線などを境に,対象となる地域を切って分図とした地図・地形図地勢図など。[b]全図・対象地域全体を一枚の地図としてまとめた地図。日本全図・世界全図など。[c]地図張(アトラス)何枚かの地図がまとめられた地図。日本国勢地図帳・各国のナショナルアトラスなど,学校地図帳。このほかでは,[d]組(地)図,[e]掛(地)図,[f]立体(地)図(レリーフマップ),[g]地球儀,などの種類がある。

【地図の利用】地図の利用法には種々のものがある。野外において実際に自分の位置を確認し,対象物の位置や方位・距離などを読み取るなどの利用法もあれば,室内である地域の現状を把握したり,旧地図との比較によって地域の発展の状況を読み取ったり,地図上で長さや面積を測るなどの作業を通して,河川の長さや都市間の距離・湖の面積を読み取るなどの利用の仕方もある。地図は種々の目的に応じて作製されるわけであるから,当然その目的に応じた各種の利用法があることになる。すなわち,地図の種類に応じた利用法が存在するといえる。これを地図の表現内容からみた地図の種類によって大別すると,主題図は,特定の対象について主張すべき事柄を理解しやすく表現している。このため,その利用は内容の理解・判読・読解といった一般的に“読図”と呼ばれる利用法が中心となる。一方,一般図(多目的図)の場合には,地図は多目的な利用に備えて,地表面にかかわる比較的多角的な事象が描かれているので,主題図の場合のような読図ばかりでなく,研究・調査・計画などに必要な内容を,地図中から抽出する作業・計測といった利用も重要である。これらの作業・計測は,読図をよりよく進める上での前段階の仕事としても意味がある。また,一般図は地表面に展開する事象をまとめる基図としての役割ももっている。この場合は,記入すべき対象の位置の判定が重要なポイントとなる。

地形図一般図のなかでも,中縮の地図として最も代表的地図は「地形図」である。地形図は現在,1万分の1,2万5千分の1,5万分の1などの種類が国土地理院から発行されている。このうち,全国にわたって作製された最も縮尺の大きな実測図は2万5千分の1地形図であり,わが国の基本図といえるものである。かつての基本図であった5万分の1地形図は明治29年以降,軍の陸地測量部で作製されてきた。第二次世界大戦後の1945年,地形図の作製業務は内務省の地理調査所に継承され,1960年以後は,建設省国土地理院がこれを担当している。2万5千分の1地形図の範囲は,東西幅7.5分,南北幅5分で,面積約100平方kmの地域である。現在約4,450面で日本全土を覆っている。5万分の1地形図は,2万5千分の1地形図4面分を編集してつくられている。全国で約1,250面あり,ほとんどの地域で明治〜大正時代以降,数度の改測や修正測量が行われており,これら旧図から当時の地域の様子を知ることができ,また新旧図の比較から地域の変遷の足跡をたどることができる。1万分の1地形図は,全国の主要都市の都市域について測量されたが,第二次世界大戦後は休版となった。1984年,新しい1万分の1地形図が5千分の1国土基本図からの編集図として刊行された。このほか,国土地理院の刊行する主要な地図としては,[1]国土基本図(縮尺2,500分の1と5千分の1)全国の主要な平野部と,その周辺地域を中心に作製されており,家々の一軒一軒が判別できる大縮尺地図で,種々の計測・調査・研究・教育などに利用できる。[2]20万分の1地勢図 府・県単位の地域を概観できる地図で,5万分の1地形図16面分の範囲を一枚に収める。全国で129面。[3]50万分の1地方図 北海道(2面)・東北・関東甲信越・中部近畿・中国四国・九州・小笠原南西諸島の8面がある。[4]100万分の1日本 全国を3面で覆う地図で,100万分の1国際図の国内版である。100万分の1国際図(万国図)は,1891年の国際地理学会議で世界的に統一した縮尺・投影法と,図式による地図の作製が提唱され,いくつかの国から刊行された地図。第二次世界大戦後は,国連の地図局が中央事務局となり,新しく制定された国際規定により各国が作製している。地名をローマ字表示した12色刷の地図。

【地図の図式(記号)】広い範囲の多くの事象を縮約して図化する地図では,記号化は必須の事柄となる。広義の意味では,図式は地図作製のための約束のすべてを指しており,縮尺・図法・記入される記号類の種類・形・色・注記・記入の精度などが含まれる。狭義には,記入される記号類の種類や形・色などの表現事項についていう。これらは,一般に凡例として図郭外周に示されている。図式(記号)は地図の表現の規定であるから,地図の用途や作製目的が変われば,図式も変わることが多い。わが国の地形図においても,幾度かの図式の変更がある。また世界各国の地形図は,その国の自然や文化の特色を反影して,共通性をもちながらも地域性のある図式となっている。

【地図の計測】中縮尺の地形図クラスより大きな縮尺の地図上で,各種の図上計測を行うことにより,独自の資料を得ることが可能になる。地形図上で行われる計測としては,経緯度の測定や距離・面積・勾配(傾斜)・高度などの計測がある。また,より高度の計測あるいは作業としては,切峯面図・切谷面図・起伏量図・傾斜正分図・水系図・谷密度図・地形断面図・河川縦断面図,それに人文的内容については,土地利用図・道路図などがあげられる。

読図と作業】地図のなかから,その地域に関する情報を読み取ることを読図という。読図に当たっては,簡単な作業を併用しながら進めることが多い。読図内容は,地図の縮尺や表現内容(一般図主題図)によって異なる。また,一般的に読図に当たって注意すべき事柄は,[1]地図の作製年次,[2]図式(記号),[3](小縮尺地図であれば)図法,[4]製作者または製作機関などである。高度の読図や作業を行う場合には,[2]の図式(記号)に含まれる事項の表現の方法(総描・省略・誇張)や精度についての知識が必要となる。また,地域についての知識が深いほど高度の読図が可能となる。読図や作業は,地域についての地理的理解を進める上で重要なものであり,地理学習や地理学研究の上でも欠くことはできない。また読図力を増すことは,人文・自然科学の関連分野おいても有効な手立てとなる。

〔参考文献〕中野尊正編『地図学』1967,朝倉書店

野村正七『地図投影法』1983,日本地図センター

山口恵一郎・品田毅『図説 地図事典』1984,武揚堂