50音順    検 索

●地域民俗学 ちいきみんぞくがく

AD 

 民俗学の一分野で,一国民俗学が国全体の民俗を分析対象とするのに対し,より小範囲を対象とし,地域ごとの民俗文化の型,あるいは民俗文化の特性を明らかにする研究。地域民俗学は歴史学がいう地方史研究地域史研究に相当するものといえよう。しかしその内容は必ずしも定まっているというものではなく,今後に残された問題といえる。

【地域民俗学の範囲】地域民俗学の対象とする範域は自然条件や歴史的社会経済的にまとまった範域を対象として,その範域における民俗文化を明らかにするものであるが,利根川や天竜川などの河川の流域,房総半島や下北半島あるいは国東半島のように半島を単位とするような,自然・歴史・文化のまとまりのある範囲を設定することが望ましく,県,市町村などの行政単位ごとにその範域を設定することはできない。その意味で,県,市町村を単位として刊行されている民俗史(誌)は,地域民俗学の領域と深くかかわり,地域民俗学の成果を導入すべきものであるが,必ずしも地域民俗学のめざす民俗誌とは一致しない。また地域民俗学の調査研究が対象とする最少の単位は,従来の一国民俗学が採用してきたムラと変わりないが,ムラを対象とし,そのムラの民俗を明らかにしたからといって地域民俗学の目的が達成されたとは限らない。むしろムラの民俗を最少単位として,それを国の民俗につなげるための範域として地域民俗学の対象地域が設定されるべきものといえよう。

【分析視点と方法】一国民俗学では個別民俗事象を取り上げ,全国的視点に立って変化変遷を明らかにするという立場をとるが,地域民俗学ではむしろ民俗の相互関連をより重視するとともに,伝承されてきた民俗の意義と必然性を明らかにするために,その背景をなす自然的条件や歴史的あるいは社会経済的条件との関係に視点をおく必要がある。

 またその分析法としては,一国民俗学で採用されている重出立証法(地域差を時間差におきかえるための方法)が,自然的・歴史的・社会経済的にまとまりのある範域を対象とする点からしてより有効性を発揮すると思われるが,同時に文献史料の活用が望まれる点で,民俗資料,文献史料の併用によって,民俗の歴史的変遷と伝えられている民俗資料の意義を明らかにすることができよう。その場合,従来の一国民俗学ではほとんど考慮されてこなかった政治と民俗との関連も無視できない視点といえよう。

 いずれにしても,地域民俗学研究を確立させることによって,これまで明らかにしてきた一国の民俗をより確実性のあるものにすることができるほか,歴史学と一体となって歴史の再構成が可能になるものといえよう。

〔参考文献〕和歌森太郎『歴史研究と民俗学』1969,弘文堂

桜井徳太郎「歴史民俗学の構想−郷土における民俗像の史的復元−」『信濃24』8・9,1972

関敬吾「民俗学の方法」『関敬吾著作集8』1981,同朋舎

千葉徳爾地域研究と民俗学」『日本民俗学講座5』1976,朝倉書店

福田アジオ『日本民俗学方法論序説』1984,弘文堂

宮田登『日本の民俗学』1978,講談社