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●断食 だんじき

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 断食とは祈りなどのために食物を断つことで,イスラームではサウムという。サウムはイバーダードの一つで,イスラームの五柱の第4にあげられている重要な義務である。ヒジュラ暦第9月ラマダーンの1カ月間,行う。ムハンマドはヒジュラ後,ユダヤ教徒にならって,ノアの方舟の離れた聖なる日,アーシューラーを断食の日としたが,バドルの戦い以後は,ラマダーンを断食の月とした。

【ラマダーンの断食】ムスリムはラマダーンの1カ月間,日の出から日没まで一切の飲食を断つ。信仰心篤いムスリムは,つばも飲みこまない。また,喫煙・性交なども行わず,言行を慎しみ,心身を清める。これがサウムであるが,そのさい,断食を行う意志(ニーヤ)が重視される。断食を行うものは,成年男女のムスリムで,心身ともに健康なものとされている。10歳以下の子供,病人,身体虚弱者,妊婦,授乳中の女性,月経や産後で出血中のもの,旅行者,戦場の兵士,高齢者,理性を失っているものは,対象から除外される。子供,病人,身体虚弱者以外は,後日,原則としてその埋め合わせをするよう求められる。ラマダーンの断食は,『コーラン』第2章183・185節の規定に従い,新月の現れを発見したときから,翌月の新月が現れるまでの30日間,または29日間である。断食の時間は日の出,すなわち早朝の礼拝から日没までである。断食を始める時間は,「黒糸と白糸の明確な判別のつくとき」を規準にする。ムスリムは早朝の礼拝の前に,断食の意志を決定しなければならない。断食の意志がなく,仕事の忙しさなどから飲食を断つことは,断食とはみなされない。ラマダーンの断食を怠った場合は,その怠った分を翌月に行わなければならない。断食の義務が免除されている高齢者は,毎日,貧しい人々に食事などの施しをすることによって,断食を償う。ヒジュラ暦では,ラマダーンが夏にあたることもある。日の出から日没までとはいえ,一滴の水も飲まない断食は,大きな苦痛であるが,これは宗教的義務であり,その苦しみをともに分かち合うことによって,ムスリムの連帯意識は高まる。また,ラマダーン27日の夜は,ムハンマドにコーランが神から下されたといわれ,ライラ・アルカド(力の夜)とよんで,聖夜とされている。

【自発的断食】ラマダーンの断食以外に,自発断食がある。これは義務ではないが,推奨される断食のことで,アーシューラー,すなわちヒジュラ暦第1月10日に行う断食,巡礼月第12月9日,第10月(シャッワール)2〜7日の6日間に行う断食がある。なかでもアーシューラーの断食は,日没から次の日没にいたるまで24時間行う。シーア派にとっては,この日はカルバラーの戦いを追悼する記念日である。680年1月10日,アリーの息子でシーア派第3代のイマームであるフサインは,ウマイヤ朝第2代カリフ,ヤジードの軍との戦いに敗れ,弟のハサンとともにカルバラーで殉死した。シーア派ムスリムは,二人の殉死をいたんで聖地カルバラーに巡礼を行い,その前日9日を断食日としている。また,ムハンマドがよく断食したといわれる第8月,そのほか聖なる月といわれる第1月,7月,11月,12月の1〜3日にも断食を行う。そのほかの月にも3度,任意の断食を行うことがすすめられている。

【断食の禁止】断食明けの祭り(第10月1〜3日),犠牲祭(第12月10〜14日)は,老若男女を問わず,たがいに祝福しあわねばならないので,両祭日のあいだは断食が禁止されている。また,金曜日は安息日で祝日でもあり,断食は禁じられている。なお,土曜日はユダヤ教の祝日,日曜日はキリスト教の祝日であるため,義務である断食以外は,これらの日を避けて断食を行う。また,断食の本来の精神的意義を忘れて,身体を弱めるような長期間にわたる断食も禁止されている。