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●大脳皮質 だいのうひしつ

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 複雑に組みこんだ多くの溝状の大脳溝とそのあいだの隆起部の大脳回の全表面をおおう表面績2,250平方cm,容積550立方km,平均の厚さ2.5mmの灰白質の薄層部で,約140億といわれる神経細胞を含む大脳半球の領域である。

【大脳皮質の微細構造】大脳皮質は図1に示す6層の形状と密度の異なる神経細胞層からなっており,表面に近い3層は人間行動の統合的働きを司る層で,深部の残り三層は運動の発現に関係する層といわれている。また,人間の大脳皮質の90%以上が六層よりなっており,K.ブロードマンは1909年,大脳皮質の神経細胞の構築状態は部位によってかなり異なっていることを見出し,それに従って52の区分を設け,それぞれに番号を符した細胞構築図を発表した。これが今日でも脳機能の領域を同定したり,脳の部位を同定する上で重要なものとなったブロードマンの脳地図である(図2参照)。大脳皮質は細胞層の形状から,六層を完全に備えた新皮質大脳辺縁系の皮質部を形成する旧皮質古皮質は,六層であっても細脳構築が異なったり,三層くらいの部分もある。後者は,系統発生的・個体発生的に最初は表面に出ているが,新皮質が発達するに従って,ほかの二つは大脳半球の底面の内側部に押しやられ,新皮質に囲まれた状態になる。それゆえに,人間の大脳皮質の構成は,新皮質大脳辺縁系の二重構造であるとされている。

【大脳皮質の分業体制】大脳皮質の機能は,新皮質と辺縁系がもつ異なる機能によって説明されるとともに,この二つのあいだの葛藤的現象が,人間の心や行動に色どりをつけるといわれている。とくに,人間の大脳の大部分をおおう新皮質の働きが,領域的に異なっていることが,臨床的所見や生理学的実験によって明らかになってきた。これを大脳皮質の機能局在説と呼んでいる。この局在説を最初に支持したのは,フランスの外科医P.ブロカで,1861年失語症患者の剖検から,運動言語中枢左半球の第3前頭回にあることを発見した。それ以後,左・右の四肢が左・右半球の皮質の対側支配であることと,感覚領など皮質機能の局在を支持する証拠があげられたが,十分なものといえず,大脳における精神機能の等価性を主張する全体論からの反発を受けた。全体論を強く主張したのはアメリカの神経生理学者C.ラシュレイで,彼は知能を最もよく反映する学習能力について,ネズミの大脳皮質の破壊実験により検討し,感覚野や運動野以外を壊しても,その効果は学習能力に本質的差を及ぼさないことを発見した。この結果,局在説は不利な立場に立ったが,1950年に入り,カナダの外科医W.ペンフィールドにより大脳皮質の表面を電気刺激によって刺激し,精神活動や運動機能の局在が人間の例で明らかにされ,皮質機能地図の作成が始まった。図3は,中心前・後回の機能分業体制を示したペンフィールドの地図である。このような感覚や運動を直接支配する領域以外に,高等な精神が営まれるのは連合野と呼ばれる領域にも分業体制があり,意欲や創造の座と考えられる前頭葉の前頭前野,記憶・判断の座の側頭葉の連合領などが人間において発達している。

【大脳皮質とほかの脳領域の連絡】アメリカの生理学者R.スペイリーは,左右の大脳半球それぞれに独立した機能があることを発見したが,半球機能が統一的に働き一人の人間として存在するのは,両半球の皮質間に連絡があることによるとして,皮質連絡の重要性を指摘している。また,ペンフィールドは皮質とそれ以下の脳幹部や辺縁系との連絡による脳活動の統一を主張する説を提出し,スペリーらの皮質−皮質間連絡説と対立している。ただ,皮質機能は局在し機能分業体制を保つだけでなく,相互連絡・皮質−皮質下連絡により高次精神活動が営まれることは,これらの連絡が障害されると,失行症失認症など脳損傷特有の認知障害がみられることからも示唆される。

〔参考文献〕時実利彦『脳の話』1962,岩波書店

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