●即興詩人 そっきょうしじん
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森鴎外による,デンマークの作家アンデルセンの長篇小説の独訳からの翻訳。翻訳には1892〜1901年(明治25〜34)の9年間を要した。初版本の序に軍務の傍らでの訳業の容易ならざること,母峰子のため大きな活字を使用したことなどが記されている。即興詩に巧みなローマ生まれのアントニオと歌劇女優アヌンチャタとの悲恋物語。親友で恋敵のベルナルド,清浄な小尼公,ベネチア市長の娘マリア,これらの人物が複雑に交錯して物語はイタリアの名所旧跡をめぐりながら展開する。失意のアントニオがやっと再会したアヌンチャタは病いで衰えており,再び姿をくらまし遺書をマリアに託して死ぬ。アントニオは絶望するが,やがてマリアがもと盲目の美少女ララであったことを知り,遺書にあるように彼女と結婚する。鴎外は13版の序で〈国語と漢文とを調和し,雅言と俚辞とを融合せむと欲〉したと述べているが,この翻訳文は原作以上であるとの世評が高い。意訳の部分が多いが,鴎外の翻訳文学の頂点に立ち,その影響力は永く後世にまで及んだ。