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●俗信 ぞくしん

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 文化・自然・人事などの諸領域に関して,広範な人々によって共有される,断片的・随意的・周辺的な民間の知識群を総称している。「迷信」と混同されることが多く,実際,個々の事象としては共通するものがほとんどと言ってもよい。しかし迷信が時代遅れであるとか社会生活を営む上で有害であるとか,マイナスの価値判断に立った知識群の総称であるのに対し,俗信は,基本的に価値中立的な概念である。ただ,俗信が迷信に転化しやすい傾向をもっているのも事実である。

【俗信の性格】さて,俗信の基本的性格は上にあげたように,まず第一に断片的である。俗信の個々の知識はある一貫した体系のなかになく,きれぎれの知識として生み出され蓄積されていく。したがって,俗信は哲学や宗教・自然科学などの領域とその点で対立する。またその時その場の状況を解釈し解決するために適宜一つの知識が選び取られればよく,しかもそれが,思考や行動の指針として人を規制する力は極めて弱いという意味で,俗信は随意的である。しかも複数の選択肢のあいだには論理的な脈絡もなく,時には矛盾することさえある。また周辺的というのは,俗信がある時代ある社会を形成するための中心的な認識や思想・技術の体系にはけっしてならず,あくまでそれらの周辺にあって,断片的かつ脈絡をもたない膨大な知識の群にとどまるということに他ならない。ここから俗信は非合理的・非科学的との価値判断が生まれ,迷信として位置づけられることになりやすい。さらに体系的一貫性にしても,社会内での位置づけにしてもつねに相対的であるから,あらゆる体系は時代が変わり社会が異なれば,容易に俗信や迷信に転化しうるのである。

【俗信の形態】俗信は,あくまで知識の一つの姿であるから,他の知識と同様,ことばによって蓄積されることが圧倒的に多い。それも単なる言い慣わしのほか,諺や唱え言葉のように定型的なことばで伝えられることが多い。そのほか身ぶりや作法を伴う儀礼・ある種の伝承的な医療の技法のように,身体的な所作とともに記憶されたり,妖怪・幽霊・つきもののように,特定のイメージに具象化されることも少なくない。

【俗信の機能】俗信を機能の面から分類すれば,おおむね予兆・卜占・禁忌・呪(まじない)の四つに分類できよう。上の四つの機能はまず第一に,人間をとりまく環境に対して,単なる認識にとどまるのか,環境に対してなんらかの働きかけを意図しているかで“予兆・ト占”と“禁忌・呪”とに分かれる。また,環境とのかかわりかたが受身的であるか能動的であるかによって,“予兆・禁忌”と“卜占・呪”とに分かれる。すなわち予兆とは,自然・天然・人事などの現象相互間の因果関係に関する知識であり,卜占は,それを人為的に得ようとする技術である。一方,そうした因果関係の知識に基づき,それを実現すべくもしくは予想される災厄を防ぐための行為を,前者は呪といい,後者を禁忌と呼ぶのである。