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●贈与 ぞうよ

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 もともとは,人に金品を贈ること・贈り与えることの意だが,民法では,とくにある者が自己の財産を無償で相手方に与える意思を示し,相手方がこれを受諾することによって成立する契約のことをいう(民法第549条)。無償・片務,契約を原則とするが,受贈者が受贈と同時に多少の義務を負担することもあり,この場合,義務と目的物とのあいだに対価関係がなくても贈与は成立するものとし,「負担付贈与」(民法第553条)と称する。「負担付贈与」の取り扱いは通常の贈与とは若干異なる。民法の定義によれば,贈与は「自己ノ財産」を無償で相手方に与えることだが,贈与の目的物が他人の所有物であっても有効に成立する(民法第560条参照)。贈与者が受贈者に財産を贈与する方法は,動産・不動産・債権などの財産権を転移する場合に限定せず,債務の免除や労務の提供などの財産的利益の転移によってもよい。要するに贈与は,贈与者に財産減少を生ずることにより受贈者に財産増加を生ずることの総称である。

 贈与契約は,贈与者と受贈者の間に交わされる契約であり,契約成立はそのまま贈与者が受贈者に対して目的物を与える債務を負うことを意味する。現存の特定物が目的物であり,契約成立が同時に所有権移転を意味するような場合(民法第176条)でも,引渡し,もしくは登記を与えるべき債務は残存するが,動産を即座に引き渡してしまうような場合にはいかなる債務も消滅する。このような贈与は「現実贈与」と呼ぶ。 贈与契約成立の方式について,民法はとくに規定していない。口約束であっても贈与の成立は認められるが,贈与の性質上贈与意思が不明確である場合も多く,ために契約の存否をめぐって紛争も生じやすく,それを防止する目的で,また当事者の軽卒な契約を戒めるため〈書面ニ依ラサル贈与ハ各当事者之ヲ取消スコトヲ得〉(民法第550条本文)と定め,いずれの当事者からも取消すことができるものとしている。外国法では,書面によらぬ贈与の効力は認めないという場合が多いが,その場合でも現実に履行されたものについては効力を認めており,この点では日本法とあまり大差がない。“書面による贈与”は,言うまでもなく,贈与者の贈与意思が書面に明示されていることを意味するが,この点に関して,判例にみる解釈は拡張的である。判例によれば,書面に贈与の辞句はもとより,無償である旨明記されていなくてもよく,最低限,自己の財産を相手方(受贈者)に取得させる意思が表示されていれば十分であるとしている。また無償である点については,書面以外の証拠資料によって認められればそれでも足りるものとする。たとえば,登録税の関係上不動産の売買契約書を作成し,その証書に代金は領収済と書いた場合についても不動産の贈与を認定している。上記のように,贈与契約は要式契約ではなく口約束も認められるから,書面が契約成立のときに作成される必要はないが,書面が作成されたのちにおいては,贈与契約を取り消すことができないのは言うまでもない。贈与意思が書面から明確に認められない限りにおいて,贈与者・受贈者およびその相続人から贈与を取り消しうる。また,履行前に著しい事情の変更があれば,書面による贈与であっても契約解除の理由になるとされる。贈与契約は無償契約であるから有償契約の場合のように贈与者に担保責任はない。贈与者は原則として,目的物の瑕疵もしくは欠陥について免責される(民法第551条1項)。贈与者が瑕疵もしくは欠陥を知りながら受贈者に告げなかったときは贈与者は責任を負う(同項但書)が,瑕疵および欠陥によって被った損害,および完全な物であると信じたことによって惹起された損害の場合に限り,受贈者から賠償を請求されることもありうる。

〔参考文献〕谷口知平編『注釈民法』1964,有斐閣

川島武宣『民法総則』法律学全集17,1965,有斐閣