●創造の神 そうぞうのかみ
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創世神話のなかで,天地などの世界や人間・動植物などを創造したとされる神を創造神という。多くの場合,創造神は,世界に充溢する存在や力の源泉かつ秩序だてるものとして,至高神と重なっているが,至高神とは別の存在とされることも多い。天地の創造と人間やその他の事物の創造が別の存在によってなされる場合も少なくない。しかし,天地や人間等が創造された後,多少とも文化的要素のある特定の事物を創造する存在は,創造神と区別されて文化英雄と呼ばれるのが普通である。また,多くの諸民族の神話における創造神は,いったん世界の創造が終わると,あとは何もしないかあるいは遠くへ去ってしまう特徴をもつ。創造神はそこでは隔絶神ないしは“隠れた神”となる。このような創造神の無為または神去りは,天地分離の形をとることもある。【創造神の諸形態】世界の創造に関わる神には,[1]至高神かつ創造神が単独で世界を創造する型,[2]天空神的な創造神が他の存在と一緒に創造する型で,協働者が女性としての大地神である型,[3]協働者がトリックスター的な反抗者である型,[4]世界の創造が段階に分かれ幾人かに引き継がれる型で,最初の創造神が去り隔絶神となる型,[5]引き継ぎが戦闘や殺害によるもので,新しい神が至高神となる型,[6]創造神とはみなされないが,原初の巨人や神の死体から世界が発生する型,などの諸形態がある。これらの諸形態は,同一神話のなかに混在していることも多い。[1]の典型例は,ヘブライの至高神ヤハウェで,旧約聖書の『創世記』では,原初の混沌から〈光あれ〉に始まる言葉によって,昼と夜,天と地,陸と海などを分けつつ万物を創造する。[2]の型は,北米先住民のズニ族の創世神話に見られる。最初にひとり存在した創造神が,思考によって自らを天空の太陽神となし,身体の垢から大地をつくり,父なる天空神と母なる大地神から地上のあらゆる万物が生まれた。この天父地母の性的結合による創造は広く各地に分布する。[3]の型には,トリックスターによる至高神の創造のパロディが世界に混乱をもたらすという形が含まれる。アフリカのドゴン族の創世神話には,[2][3][4]の型が混在する。創造神アンマは太陽や月をつくり,女の身体である大地をつくった。アンマは大地と交わり,まず無秩序を表象するユルグと次に秩序を象徴する双子神ノンモを生む。反逆児ユルグは母なる大地を犯して汚し,創造神アンマは妻である大地から遠ざかる。父なる神から創造の業を引き継いだノンモは,ユルグが混乱と暴力をもたらした地上の世界の再秩序化を行う。[5]の型は,アッカドやギリシアの創世神話に見られる。アッカドではマルドゥーク,ギリシアではゼウスが神々の戦いに勝利して世界の創造と秩序を完成させ,至高神となる。[6]の型は,中国の盤古神話など世界各地に見られるが,アッカドのマルドゥークによる原初の海神ティアマトの殺害や,ゲルマン神話でのオージンによる原初の巨人ユミルの殺害など,創造神かつ至高神が原初の巨人や神を殺し,その死体を分断して世界をつくったという型もある。
【秩序と混沌】創造神による世界の創造は,原初の混沌から分けることによって秩序を生みだす作業であり,秩序と混沌のドラマである。混沌は原初巨人の殺害や天地分離におけるように,秩序を生むために退けなければならないが,混沌がなければ世界は動かず秩序の発展もない。この混沌と秩序の相互性が,創造および創造神の性格を決める。創造神の多くが遠ざかったり殺されたりするのは,秩序の脅威ともなる原初の混沌に深くかかわる創造神が隔絶することで秩序を安定させるためであり,無秩序的な存在と協働するのは,混沌性を他の存在に割り当てそれを抑えて秩序を安定させると同時に,その混沌性が秩序の維持・再編成に必要であるからだと言えよう。そのような創造は,社会秩序の再生のための祖型となっている。
〔参考文献〕大林太良『神話学入門』1966,中央公論社
阿部年晴『アフリカの創世神話』1965,紀伊國屋書店