●創唱宗教 そうしょうしゅうきょう
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宗教を発生形態から類型した場合のことばで,特別な一人の創唱者によって唱えられた宗教をいう。普通,わが国の神道のように民権の習俗的な宗教意識から自然発生的に生まれてきた自然的宗教に対して用いられ,創唱者は,神仏または霊的超越者から何らかの啓示(けいじ)や神託を受けることで,神仏の真理や意思を人間に示す形式をとる。人間は,その神仏のことばである啓示を信じ従うことで救済される。創唱宗教の代表的なものには,まずゴータマ=ブッダ(=釈迦)を創唱者とする仏教,イエス=キリストに始まるキリスト教,マホメットによって開かれたイスラーム教の,いわゆる世界の三大宗教がある。また,古代ペルシアのゾロアスターの創唱になるゾロアスター教,その系列に列なるマニによるマニ教,バハウラによるイスラーム教系のバハーイ教なども創唱宗教に数えられている。
日本では,19世紀初頭からの幕末維新の社会変動期に,習合神道系・山岳信仰系・法華系など,多くの新しい創唱宗教が誕生し今日に及んでいる。幕末に生まれた黒住宗忠を教祖とする黒住教,中山みきによる天理教,川手文治郎による金光教などがそれで,明治以降では出口なおによる大本教がある。これらはいずれも今日,広義の新宗教に数えられる新しい宗教だが,その創唱者はふつう,いわゆる「教祖」(あるいは「開祖」「教主」)と呼ばれ,この場合,創唱者はほぼこの教祖と同意語である。この流れにはさらに,大正・昭和期に生まれた小谷喜美による霊友会教団,岡田茂吉による世界救世教,岡野貴美子による孝道教団,伊藤友司による真如苑,力之辰斎による善隣会,御木徳一・徳近によるPL教団などがある。
一般に,これら創唱宗教の特色は,第一に,自然発生的な宗教ではその担い手が特定の国や地域・民族に限られる傾向をもつのに対し,いかなる国・地域・民族にも開かれている普遍的な性格をもつ点があげられる。
第二に,その発生が何よりも特定の宗教的人物の救済体験に根ざし,その人格を色濃く反映しているところにある。
とはいっても,創唱宗教とて母胎となる宗教と無関係ではない。仏教は,古代インドのバラモン教を基盤にブッダという宗教的人格の生活史と体験から生まれたのであり,キリスト教とイスラーム教が,共にユダヤ民族のユダヤ教の一神教の神観念をベースに,イエス・マホメットというそれぞれ独自な宗教的人格の時代的背景・神秘的体験から生み出されたのは広く知られている。しかも,こうした事情は,日本の創唱宗教においても同様である。
例えば,宗教学者の村上重良氏は,幕末維新期の天理教・金光教などの創唱宗教について〈習合神道の広大な基盤から生まれた〉と述べている。このことは,その後の創唱的新宗教にあっても概ね変わりがなく,教義は既存の神道・仏教,それにわが国一般民衆の雑多な民間宗教的な意識を反映,それが創唱者の“神がかり”などの神秘的体験,および生活史とからめ説かれている。しかも,それでいて創唱宗教は,既存の宗教とは一線を画し,普遍性をもつ宗教へと飛躍するとともに,時代と創唱者の個性を反映するものとなっているのが通例。その上,創唱者が意図するとしないにかかわらず,やがてその独創的な教義により,また創唱者自身が崇拝対象とされることによって,そこに教団形成が行われる。
また,そこで説かれる教義は,自然発生的な民族宗教が当然のこととして,共同体の全構成員によって担われるものと予想するのに対し,創唱宗教では人間一人ひとりを対象とする個人救済宗教となっているのも特徴の一つ。そのことから,布教宗教としての性格を持つのも創唱宗教のもう一つの特徴とされる。
〔参考文献〕村上重良,安丸良夫校注,日本思想大系67『民衆宗教の思想』1971,岩波書店
小口偉一,乾季,佐木秋夫,松島栄一『教祖−庶民の神々』1955,青木書店