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●染色 せんしょく

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 染料や顔料を用いて繊維その他の被染物に化学的あるいは物理的に色素を染色固定すること。その素材は繊維と染料に二大別されるが,繊維には植物性繊維,動物性繊維,化学繊維があり,染料には天然染料と合成染料がある。染料は繊維の種類によって適否があり,染料と繊維の性質によって染色法も異なる。染色法は大きく分けると,[1]直接染法,[2]媒染染法,[3]還元染法,[4]発色染法,[7]分散楽法の5種になるが,その基本は水に溶けた染料の分子が繊維のなかにしみこんで繊維分子に固定されることであり,その過程に含まれる化学的・物理的作用の相違によって分類される。

【直接染法】水溶性の染料を溶かした溶液中に繊維を浸して染める方法。木綿,人絹,麻には直接染料,羊毛,絹には酸性染料,絹には塩基性染料を用いて直接染法で染めることができる。たとえば直接染料で木綿を染めるときは,染料溶液を80〜90度に加熱すると電解質の効果が高くなり染着量が増加する。染め方としては最も簡単な方法だが,洗濯や日光に弱く,変色・褪色をきたしやすい。このため銅やクロムなど金属イオン溶液やホルマリン溶液で日光堅牢度・洗濯堅牢度を高める後処理を行い,色止めを施す。

【媒染染法】染料そのものに繊維に対する染着力がない場合に,媒染剤を用いて繊維と染料を間接的に結合させて染める方法。木綿,人絹用の塩基性染料,羊毛用の酸性媒染染料,天然染料のほとんどは媒染剤を必要とする。媒染剤としては酢酸アルミニウム,酢酸鉄などの鉄塩,クロム塩,スズ化合物などの弱塩基・弱酸塩を用いる。繊維を媒染剤溶液に浸して加熱すると媒染剤は加水分解をおこして金属酸化物となり,これを染料溶液中に浸すと染料と金属酸化物が結合して,繊維に高度の染着を与えることができる。

【還元染法】不溶性の染料を用いる場合に,染料を還元して水溶性の化合物に変えて繊維に染着させ,これを酸化して繊維上で色素を再生して染める方法。木綿や麻に建染染料や硫化染料を用いる場合,アルカリ性のハイドロサルファイトや硫化ナトリウムで還元すると,染料は水溶性のロイコ化合物となり繊維に染まる。染まった繊維を空気中にさらすと,染着した染料は酸化され,繊維上で元の不溶性染料に戻り色素を再生する。建染染料を還元する操作を“建てる”といい,硫化染料を還元する操作を“加硫”または“チオネーション”というが,近年ではあらかじめ水溶性のロイコ化合物の形にした可溶性建染染料もあり,羊毛用などに使用されている。この染色法は日光堅牢度・洗濯堅牢度ともにすぐれ実用的価値が高い。

【発色染法】不溶性の染料で,還元すると染料が分解して色素の再生ができない場合に,色素の原料となる物質(染料中間物)を繊維に順次しみこませ,繊維上で色素を合成して染める方法。木綿や人絹に用いるナフトール染料による染色はこの染色法の代表例である。まず繊維にカップリング成分となるナフトールを下漬剤としてしみこませ,これをジアゾ成分を含む顕色剤につけると繊維上で不溶性の色素が合成され発色する。この合成化学反応に使う中間物をナフトール染料といい,冷染染料・顕色染料ともいわれる。現在約30種の下漬剤と約50種の顕色剤が使用され,この組み合わせによって1,500の色相が得られる。日光堅牢度・洗濯堅牢度は強いが,摩擦に対しては弱いという欠点もある。

【分散染法】可溶性ではあるが溶解度の小さい分散染料を界両活性剤を用いて水中に細かく分散させて染める方法。合成繊維など疎水性の繊維を染める場合は,水溶性の染料では繊維に染料がなじまないため,水に溶けにくい染料溶液中で分散浴を行い,繊維中に染料分子をしみこませる方法がとられる。この染色法では,空気中の酸化窒素類の作用で“ガス=フェーディンク現象”がおこり雑色をきたすのが欠点である。

【染色抜法】染色抜法は[1]無地染と[2]模様染に分けられる。[1]の無地染の歴史は非常に古く,おそらく紡織技術の発生についで行われはじめたものと思われる。世界最古の無地染の遺品としては,エジプト第12王朝(前1991〜前1786)の墓から出土したミイラ2体の黄褐色の巻布があり,これには紅花染と鉄媒染染が用いられている。無地染は繊維によって必要に応じて精練,漂白を行い,手染あるいは機械染で浸染・引染・吹染・パッディング染その他の方法によって染めるが,全体が均一に染まることが重要である。木綿や麻は染色の前に漂白を行うが,18世紀半ばから末にかけて漂白工科が改善され,19世紀の紡織の機械化,合成染料の発明に伴い完全に手工的方法から脱皮した。無地染用の染色機械としては,糸用浸染機,布用浸染機の2種があり,布用浸染機には,毛織物用・絹織物用・縮織物用の枠染機,淡色染用のパッディング染機,人絹など繊維の伸長度の高い布用のジッガー染機などがある。

 [2]の模様染は種類・方法とも多く,技法によって[a]模様を直接印花する方法,[b]模様の部分を防染処理して地を浸染する方法,[c]模様の部分を抜染して無地染にする方法,[d]その他の特殊な模様染に大別できる。[a]には筆,刷毛,筒などを用いて直接模様を描いていく描絵,描更紗,描友禅,蝋染などの技法と,型を用いて直接模様を印花していく擢絵,刷染などの捺染技法があり,描絵,描更紗の類はかなり古くからエジプト,インド,ペルシア,中国で行われていた。また直接印化法の型としては,型紙(彫抜型)・スクリーン型(彫抜型)・木型(凸版)・銅版(凹版)・陶版(凸版)・銅ロール型(凹版)その他があり,木綿の原産地であるインドに始まった捺染技術がエジプトやインカまで伝わったものとみられている。インドには約2000年前の陶版(テラコッタ型)が残っており,わが国では木型印花の擢文布帛が正倉院に多数残っている。近世ヨーロッパではフランスを中心に木版捺染技術が発達しジュイ更紗として知られ,17世紀半ばには綿更紗の銅版捺染が各国に普及した。また捺染技術には綿織物工業の発達とともに進展し,産業革命を迎えると1797年イギリスで輪転式捺染機が発明されたのをはじめ,1834年,フランスでペロチン捺染機が完成され,近年では一時に16色くらいまで染色可能な多色捺染機の出現をみた。[b]の防染模様染にはロウケツ※注1※・纐纈・コウケツ※注2※の3纈と絞染などの技法があり,ロウケツ※注1※には筆・筒などを用いて防染剤の蝋を直接手描するものと,木型や金属型を用いるものの2種がある。手描,型使用ともに模様の部分に蝋を置き地染したあと脱蝋するものだが,いずれも古くから広く分布し,6〜7世紀エジプトで使用された木型が残っている。わが国では唐代中国から伝えられた木型ロウケツ※注1※法が平安時代ころまで行われ,纐纈は糸で織物の一部をくくって防染する絞染の一種で,目結や結機・コウケツ※注2※とともに奈良時代から行われ,正倉院裂のなかに多くの遺品を残している。コウケツ※注2※は物理的な力を加えて防染するもので,折りたたんだ布地を板に挾んで締めて染める単純な板締染と,模様を陽刻した木,金属の型板に挾んで染液を陰刻部に注入して染めるものがあり,唐代中国から伝わったものと考えられている。絞染の発生はインド起源とみられているが,エジプト,ペルシア,中国,インドネシア諸島などきわめて広く分布し,わが国でも奈良時代ころから発達した。絞染の種類は鹿の子絞,匹田絞,三浦絞,養老絞,白影絞,羅仙絞などがあり,室町から安土桃山時代にかけて盛行した辻が花染は精巧な絞染で絵模様を表し,手彩色を加えたものや擢箔・縫箔を施したものも現れた。[c]の抜染法は化学的に抜染できる染料が合成されてのちに行われはじめたもので,地染した上に抜染剤を混ぜたのりを置き,模様の部分を白抜きにするものと,抜染のりに抜染できない染料を混ぜた色のりを用いて着色抜染を行うものがある。この技法は輪転捺染機などに用いられ,現在広く応用されている。[d]の特殊な模様染としては,平安時代の淡央,末濃,村濃などの墨染があり,降っては量友禅や墨流し染,色のり流し染などがある。

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