●専守防衛 せんしゅぼうえい
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「専守防衛」という用語が,公式に使用されるようになったのは,1970年(昭和45)の防衛白書が,「専攻防衛の防衛力は,我が国に対する侵略があった場合,国の個有の権利である自衛権の発動により,戦略守勢に徹し,我が国の独立と平和を守るためのものである。」と述べてからである。これは,全般的な防衛態勢のなかで,相手から武力攻撃を受けた後に初めて防衛力を行使し,防衛力行使の態様も自衛のための必要最小限度にとどめ,防衛上の必要からも相手国の基地を攻撃するというような戦略的な攻勢をとらず,もっぱらわが国土およびその周辺において防衛し,侵攻する相手をそのつど撃退するという受動的な防衛戦略の姿勢をいい,わが国の防衛の基本的な方針となっている。(衆・本会議,昭和47.10.31,田中総理答弁,参・予算委,昭和56.3,19,大村防衛庁長官答弁)。わが国が保有することのできる防衛力は,憲法の許容する範囲内のものでなければならず,憲法の趣旨からも防衛力は必要最小限のものに限られる。「専守防衛」は,このような性格をもつわが国の防衛力の運用についての基本方針であり,わが国の防衛力整備の前提となるものと考えられている。わが国の防衛力は,「専守防衛」を本旨とするため,たとえ防衛上の必要性があっても,相手国の基地を攻撃するような戦略的攻撃はとれず,このような目的にもっぱら使用される。たとえばB−52のような爆撃機,ICBMのような戦略ミサイル,攻撃空母などの戦略兵器を装備することはできない。これらの兵器は,憲法上の制約によって保持することのできない「他国に侵略的・攻撃的脅威を与えるような兵器」であると考えられている。わが国の防衛力がこのような戦略的攻撃手段をまったく保有しないことから生ずる防衛上の弱点については,日米安全保障体制にもとづく米国の戦略攻撃力に依存して補うことになっており,この点からも日米安全保障体制が必要であるとされている。
また,わが国の防衛力が専守防衛を旨とするため,相手からの侵略が予想されても,相手国に対する先制攻撃をすることはできず,必ず侵略者の攻撃に対して,そのつどこれを防御し排除しなければならない。このことは,わが国の国土が南北に細長く,しかも大陸に接近しているため,航空機などの攻撃に対しては,防衛上の距離的・時間的余裕に乏しいという地理的特性と相俟って,わが国の防衛をむずかしいものにしている。したがって,わが国を防衛するためには,侵略者の意図や動静を少しでも早く察知して,これに対する防衛態勢をとらなければならず,警戒・監視・偵察などの手段を充実させることが要請され,全国28カ所のレーダーサイト,沿岸監視所,警備所のほか,レーダーを搭載して,空中を哨戒する早期警戒機E―2Cが活動している。
また主要な海峡などを通過する艦船などに対する陸上からの警戒・監視は,天候などにより制約があることから,これを補う措置として,津軽海峡,対馬海峡,宗谷海峡には,海上自衛隊の艦艇が常続的に配備されている。海洋国家であるわが国の周辺海域のうち,日本海,東シナ海,北海道周辺海域を行動する艦船については,海上自衛隊の対潜哨戒機や艦艇が,警戒監視を実施している。また,短時問で侵入機を迎撃できる高性能の要撃戦闘機(F−15戦闘機など)や,地対空誘導弾(パトリオットなど)の整備も重要な問題となる。
さらに「専守防衛」においては,いわゆる「海外派兵」ということはあり得ず,防衛戦闘は,つねにわが国土およびその周辺で行われることになるから,国内で防衛戦闘が行われて生ずる被害を防ぐ意味からも,侵略を未然に抑制することが重要であり,抑止力としての防衛力の意義が重視される。また,万一の侵略事態に備えてのいわゆる「民間防衛」の問題も,今後検討すべき重要課題であるといわれている。
〔参考文献〕防衛庁『日本の防衛』1984
『防衛ハンドブック』1984,朝雲新聞社