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●雪害 せつがい

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 積雪や雪崩などによって蒙る自然破壊や交通機関・農作物・植林樹木・構築物などの被害の総称。冬期季節風が卓越風であることと日本海流の北上,列島を縦走する中央部の脊梁山地などの自然環境から,日本海側各地の雪害が太平洋側のそれに比して著しい。加えて,日本海側の多雪地帯に広く人々が住みついていることから,雪害は単に経済的損失に止まらず,人命に影響を及ぼすことも少なくない。冬山登山者や傾斜地の歩行者などを直撃して人命を損なう雪崩の例はよく知られている。居を構える背後の傾斜林をムラ決めの雪崩防止林としているのは,永住者としての知恵である。屋根雪降ろしにあがり,積雪とともにずり落ち,雪に埋まって窒息死することもしばしばある。たとえ一命をとりとめたにしても,骨折や大怪我をする人は跡を絶たない。大屋根から屋根雪が不意にずり落ち,その下敷きとなり事故死することがある。屋根雪降ろしの現場では,赤い布切れをつけた竹の棒を立てて,歩行者に注意を喚起するのはそのためである。寒気が緩み,積雪でせき止められていた河川が溢れて洪水がおこり,橋を流失させ,橋上の歩行者を呑み込むことがある。肥ひき・材木の搬出・狩猟など終日雪中に働くものが,ユキメ(雪目)を患うのも雪害の一種と解されよう。固くしまった積雪の表面に紫外線が反射するからである。重度の場合は失明の危険をはらんでいる。積雪による被害は住生活の種々の面に及んだ。屋根雪が水分を含むと重さを増し,1m余り積もると,1平方m当たりl,000kgにもなり,家屋倒壊の危機を迎えるという。そこまででなくとも,屋根雪の重みで梁がきしんで音を出し,戸障子の開閉がままならなくなったりする。また,勢いよく片屋根の雪がずり落ちると,その反動で茅葺屋根の棟がまくれてきたり,軒先がへし曲げられたりする。屋根雪が地上の積雪とひとつづきだと,張力で同様の結果を招くので雪庇を落とさねばならない。時間の経過を待たずに屋根雪を落とすのは,被害を未然に防ごうとすることにほかならない。こうした鉄則から,屋根雪降ろしの人夫賃は通常の場合より割高で,男手のない家では費用捻出に苦慮する例も少なくない。ムラ内の公共建物の屋根雪降ろしは,ムラ人に課せられるので,自分の家の屋根雪降ろしと並行してやるには精神的苦痛が伴ったであろう。被害が甚大である点では,植林した樹木も無視できない。庭木の雪囲いないし雪つりは,雪国における冬の風物誌と片付けられるとしても,冠雪と気温低下などの条件が相まって,植林した樹木の幹が裂け枝が折れては,それまでの労力投下が無駄となる。とくに植木して間のない若木では,シン(梢)が折れたり,ねじ曲げられたりなどして発育が遅れるのである。春を迎えてなされる槫葺屋根のクレガエシや,植林地での木おこし作業などは,雪害の後始末とみてよいだろう。社会的に大問題となる雪害に交通機関に関するものがある。都市部にみられる融雪装置・除雪車の発動などに要する費用を考えただけでも一目瞭然である。それにもかかわらず,豪雪地では外部との交通が絶えて,陸の孤島と化するムラの例がしばしば報道され,急病人の救出・生鮮食料品(野菜)の確保など緊急事態が発生している。それに裏通りへ目を転ずれば,屋敷内の通路を確保するための除雪はもちろん,屋敷に面する道路の除雪や雪捨てなど自前で処理しなければならない。これを正当に賃金換算するならば莫人な額となろう。隔絶したムラでは,隣村までの雪踏みで交通を確保してきたのであるから,その苦労は並大抵でなかったにちがいない。積雪・雪崩による鉄道交通の運転とりやめ,同じく道路交通における路面スリップによる渋滞など,経済活動に対するマイナス面が著しい。屋外における仕事が制約されること,茅束などで雪囲いして冬季に備えること,除雪をめぐって不仲になることなど,積雪に原因していることがいくらも数えられる。雪害が,雪国の人々に重くのしかかっていることはいうまでもない。