50音順    検 索

●世間胸算用 せけんむねざんよう

アジア 日本 AD 

 浮世草子。井原西鶴作。1692年(元禄5)刊。5巻5冊。「大晦日は一日千金」という副題が示すように,大晦日の1日という時間設定のもとで,中下層町人たちの経済生活を描くことを共通の話題とした20章よりなる短篇小説集。〈大晦日定めなき世のさだめ哉〉(『俳諧三ケ津』)という西鶴の句があるが,本作品の各章は,定めなき世の定めの日(収支決算の日)である大晦日における,名もなき町人たちのやりくり話や各人各様の年越しの様子を語り,きびしい現実と対決せざるをえない庶民たちの生のありようを鋭くとらえている。また,悲惨な現実を喜劇的に表現するその方法は,ユーモアのなかに哀感を漂わせ,現実感にあふれた軽快な文体による描写を有効に生かして,人の世のありようをみごとに浮き彫りにしているといえよう。西鶴最晩年の傑作として評価の高い作品であり,その町人物の世界の到達点ともみられる作品である。