●政府 せいふ
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政府という語は,広義狭義両様に使われている。最も広い意味では,国家主権が現実に機能するために設けた統治機構のすべてをさし,具体的には,立法・司法・行政に関する組織および機関の総体をいう。狭義には,三権のうちの行政府だけをさし,最も狭い使い方では,行政府の頂点に立つ内閣だけを意味する。欧米,とくにアメリカ合衆国では,government といえば行政府だけでなく,立法府としての議会を当然含んでいるが,これは議会政治が早くから発達し,議会から切り離した行政府を考えることができないからである。わが国の場合は,統治組織の1部門としての行政府,ことに内閣をさすことばとして用いられることが多い。それは明治政府発足当初,太政官制度を導入して三権の分立を認めないままの統治機構を“政府”と呼称した事実に由来しているといわれ,つづく近代的立憲体制である明治憲法時代においても,帝国憲法第8条,第38条などにみられる“政府”ということばは,国家統治機構のうち,議会や裁判所を除外した意味に用いられている。これは明治憲法体制では,天皇の信任によって成立する内閣や,天皇の任命する官僚を中心として構成する行政諸官省がまさしく統治機構の中核であって,民意を代表する帝国議会は,天皇の立法大権を協賛する機関にすぎず,天皇の政府に対立する存在として理解され,裁判所も〈天皇ノ名ニ於テ〉司法権を行う機関として位置づけられていたためである。国民主権をうたう日本国憲法では,国家機関は,すべて国民の信託を受けて与えられた権限を行使すべきものと考えられているから,立法・司法・行政の三権を包含する国家統治組織のすべてを“政府”と考えるのが相当であろうが,一般的には依然として狭義もしくは最狭義の意味で使われている。また,中央政府に独立する形での地方自治が発達しなかったわが国では,欧米でいう地方政府の観念がない。