●精神分析 せいしんぶんせき
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フロイトによって創始された学問体系。人間の心の働き・行動・思考などの背後に無意識の存在を仮定し,人間の心を人格構造として力動的に理解し,探求する学問体系を意味する。また,精神分析は自由連想法や解釈の技法によって,神経症など成人や児童の精神障害を治療する技法である。【精神分析の理論】広範で複雑な精神分析理論は,だいたい次の観点からまとめられる。[1]局所論的観点:人間の心の領域を意識・前意識・無意識の3領域からとらえ,抑圧された無意識の願望が夢や神経症の症状に表現されると考える。[2]構造論的観点:人格の構造として,エス・自我・超自我の3層からみていく立場である。フロイトの後期の研究『自我とエス』(1923)によって示された。エスとは,無意識過程の領域にある抑圧された幼児期的・原始的経験や欲求などの心的エネルギーの貯蔵所である。自我とは外界の現実と接触し適応していくため,エスからの欲求や超自我からの禁止を調整し,心の安定や人格の統合をはかる働きをする。超自我とは,内的に形成された社会規範ないし良心の働きである。われわれの行動を判断・評価する。[3]力動的観点:すべての心的現象の背後に自己拡大的な力(エロス)と自己破壊的な力(タナトス)の相克を仮定し,どのような欲求が相互に葛藤をつくりあげているかを力関係から理解していく。[4]経済論的観点:人間には一定量の利用できる心的エネルギーがあり,そのエネルギーの配分のあり方から心の働きを理解していく。ある特定の問題にエネルギーが使われすぎると(固着),ほかの問題にエネルギーがまわせなくなり,問題の解決ができなくなることがおきる。[5]発達的観点:人格の形成や人格形成の歪みとしての神経症など精神病理の形成される過程を幼児期からの発達的な体験過程から理解していく。フロイトは人格発達をリビドー(性的欲動)の体制化過程,つまり心理・性的発達の過程とみた。フロイトは性的と性器的とを分けた。性器的とは成人の性的活動をさし,性的とは,身体的・感覚的快感を与える活動全体をさしている。性的活動は発達の過程のなかで集中して特定の身体部位に表現される。これを性感帯と呼び,口唇・肛門・男根領域によって示される発達の過程を記述した。口唇期とは,母親の乳房を吸う口唇的活動が中心となる生後1年半くらいまでの時期。肛門期とは,部位が肛門に移り大便を排泄すること・貯めることのテーマが中心となる生後2〜3年までの時期。男根期とは,男根に対する関心が高まり,子供が異性の親に対して性的願望を抱く生後3〜5年ごろの時期。この時期は,ギリシア神話にもとづいてエディプス期と呼ばれる。男児の場合,父親からの懲罰としての去勢不安を抱く。しかしやがてこの時期を親との同一化をへて乗り越えていく。その後の学童期は潜伏期と呼ばれ,性的活動は鎮まる。思春期には再び活発となる。成人期は性器的活動が完成していくことから性器期と呼ばれている。このような発達段階のどの時点で問題がおこり,固着しているかという観点から人格形成・精神病理が理解される。とくに神経症の発症にはエディプス期の親子関係が重要視されている。
【フロイト以後の発展】精神分析はフロイトの死後,構造論的観点と発達的観点を中心にして自我論として発展した。これに加え,フロイトの生物学主義やリビドー論を批判して,文化的要素や対人関係を強調する新フロイト派(フロム・ホルナイ・サリバン)の活動がある。さらに,内的対象関係を乳幼児期の最早期において明確化しようとした対象関係論学派(クラインら)の活動がある。そして現在,これらの諸学派の研究活動を統合した統合的な人間の心の学問体系としての精神分析学の構築がめざされているところである。精神分析学は人間理解の方法として,哲学・社会学・文学・文化人類学・現代の思想に大きな影響を与えている。