50音順    検 索

●精神史 せいしんし

AD 

 19世紀末から20世紀初頭にかけて歴史学が分化してできたさまざまな専門史の一つ。もっぱら精神の領域を対象とする歴史なので思想史に似ているが,社会と密着している思想史より抽象度が高く,むしろ文化史・哲学史・宗教史・芸術史などに近い。しかし政治上や社会史・経済史と無関係ではない。精神のはたらきに応じて総合的なものだから,精神史の対象は限定しにくく内容が一定していない。ドイツの最大の精神史家トレルチの著作を範としてみると,彼は精神史を宗教・倫理・思想を総合した文化総合の歴史としている。たとえばヨーロッパの近世精神史はギリシア・ローマの古典古代とキリスト教とゲルマン精神と特殊近代的精神が絡んでできたものとみており,そのなかには政治・経済・社会の硬い要素と科学・哲学・倫理・芸術・宗教の柔らかい要素が含まれているという。その歴史は具体的には,「近代精神の本質」「啓蒙主義」「17,18世紀のイギリスの道徳論者」「理神論」「ライプニッツ敬虔主義の初め」「ドイツ観念論」「19世紀初めの復古時代」「19世紀」という諸論文が通史のかたちを成している。トレルチはすべてを歴史的にみるが,単なる歴史主義ではなく,歴史的・個性的なものと不変の絶対的な価値が統一されることを望んでいた。それが「ヨーロッパ主義」という一つの文化総合に実現しているという。また20世紀のドイツの歴史家マイネッケが書いた『世界市民主義と国民国家』『国家理性の理念』はいずれも政治史と精神史を結びつけた歴史の名著といわれている。哲学者ディルタイのいう精神科学とともにきわめてドイツ的な発想の特色をもっている。