50音順    検 索

●水産加工 すいさんかこう

AD 

 水産物は変質や腐敗しやすいこと,漁獲される場所が限定されていること,さらに漁獲の時期や量に変動が多いことなどの特性をもっている。この欠点を補ったり,水産物の商品価値を高めるために,加工が行われる。水産加工品は食用品と非食用品の二つに分けることができ,さらに非食用品は農用品,工業用品,工芸用品,薬用品に細分される。

【水産加工の歴史】素干し,煮干し,塩蔵品などは,すでに先史時代からつくられていたと考えられる。また,貝殻や魚類・海産動物の骨などを利用して,生産用具や装飾品が活発に生産されていた。日本では,奈良時代の記録から各種の乾製品,塩蔵品のほか,調味加工品としてかつおの煮汁,さらに貝の酢漬・鮨・ところてんなどの記録があり,灯油として魚油が利用されていた。肥料として魚が使用され始めたのは室町時代といわれるが,魚粉が生産され大量に取り引きされたのは,江戸時代に入ってからである。江戸時代には各種の海藻の乾燥品・寒天・魚卵の加工品・塩辛類・魚醤油・魚漬物・かつお節・かまぼこなどの練製品の技術が新たに発達した。明治以降の特筆すべき水産加工技術としては,かん詰加工・佃煮そのほかの調味食品加工・魚肉ハム・ソーセージ加工・冷凍などがあげられる。近年,発展の著しいものに冷凍食品があり,なかでも調理ずみの冷凍インスタント食品の増加がめだつ。

【水産加工の目的】水産加工の主要な目的として,つぎのものがあげられる。[1]変質および腐敗の防止のために,それをおこす細菌が増殖しないような状態にする。氷蔵・冷蔵・冷凍など低温にする方法や,かん詰・びん詰など高熱による殺菌,水分を除いたり(乾蔵),食塩を用いたり(塩蔵),防腐剤を使用する方法がある。[2]漁獲の場所が限定されていたり,量と時期の変動が大きいため,上にあげた技術によって,水産物の長期間の貯蔵を可能にし,運搬を容易にする。[3]消費者の嗜好にあわせたり調理の手間を省いたりするため,水産物を変形し,処理し,商品価値を高める。佃煮や塩辛,各種の練製品,インスタント食品などはこの例である。[4]水産物処理の際に生ずる廃棄物を加工し,たとえば,魚肥や家畜の飼料などの有用品をつくる。[5]水産物に含まれる有用成分を,物理的・化学的方法で採取する。

【水産加工品の種類】多くの水産加工品が生産されているが,主要なものを以下に列挙する。食用品では[1]冷凍品 マグロ類・イカ類・タラ類のほか多くの魚介類・調理冷凍食品,[2]乾製品(ア)素乾品(するめ・身欠ニシン・干かずのこ・干たら・田作り・たたみいわし・ふかひれ・こんぶ・わかめなど),(イ)煮干品(煮干いわし・干えび・貝柱・干あわび・干なまこなど),(ウ)塩干品(塩干いわし・塩干あじ・塩干ぶり・くさやのひもの・塩干たら・塩干ししゃも・からすみなど),(エ)節類(かつお節・雑節・けずり節,(オ)凍乾品(めんたい・寒天),(カ)焙乾品(たいの浜焼き・焼きのり),[3]塩蔵品 魚類塩蔵品(塩さけ・塩ます・塩たら・塩いわしなど),魚卵塩蔵品(すじこ・イクラ・たらこ・キャビアなど),[4]調味加工品(塩辛類・漬物類・練製品・佃煮類・のしいかや魚あられなどの調味乾品),[5]かん詰・びん詰(水煮・油漬・味付など)。工業・工芸用品では[1]魚油(イワシ油・クジラ油など),[2]皮革(サメ皮・クジラ皮),[3]さんご・貝殻・くじらのひげ・カメの甲・人造真珠液,[4]濃縮魚肉エキス・濃縮魚タンパク質。農用品では[1]肥料用魚粉,[2]フィシュミール,[4]フィシュ,ソルブル。薬用品では[1]肝油,[2]インシュリン。第二次世界大戦後の都市的生活の浸透,著しい食生活の洋風化は,水産加工品に対する需用を大きく変え,従来の塩蔵品や塩干・塩辛・佃煮類が伸びなやむ一方,くん製品,調理冷凍食品,切り身などのパック食品の普及が著しい。

〔参考文献〕谷川幸一『増補水産加工学』1965,恒星社厚生閣

項山三千三・三輪勝利『最新食品加工講座 水産加工』1981,建帛社